-磐梯・吾妻・奥只見を走る-
1.計画を練る
10月17日から19日にかけて、二泊三日、紅葉を求めて、維新政府に最後まで抵抗した、旧米沢藩・会津藩・長岡藩の山岳路を駆け巡った。昨年の道東ドライブも楽しかったが、それとはまるで異なるグランドツアーは「こんな車の旅がしかったんだ!」と言う潜在願望を目覚めさせるものだった。その記憶と感動が褪めぬうちにそれを綴ってみたい。
春のドライブ(吉野・高野・龍神)が終わると直ぐに、「秋はどんな所へ出かけるか?」と早くも考え始めていた。第一候補は当初能登半島だった。ここは和歌山工場勤務時代の1969年春一人で廻っているのだが、半島の先端、珠洲(すず)まで行かず、能都町から北上し輪島に出たので、完全に一周していないことが引っかかっていたからだ。今度はどう言う旅をするか?風景、歴史そして道を調べているうちに、だんだん興味が失せてきた。珠洲にはほとんど何も無く、半島に歴史を留めるのは平時国が蟄居した時国家くらい、風景も清張の小説で有名になった能登金剛、温泉は和倉。これらは前回全て訪れているし、それほど惹かれるものは無かった。最も不満だったのは能都町から珠洲を廻って輪島に至るルートに変化(高低)が乏しいことである。加えて半島に至る最短ルートは一昨年の宇奈月・高山・黒部行と重なり、新鮮味が無い。
そんな時フッと浮かんできたのが豪雪地帯を走る只見線に並行する国道252号線である。只見川の大規模な電源開発と只見線の全線開通は1960年代から70年代初期の代表的な土木工事、以前からチラチラと“走りたい道”として浮かんでは消えていた。鉄道作家、宮脇俊三の本で“鉄道からみる紅葉の美しさ”で最高点を獲ったと書かれていたのも記憶に残っている。7月初旬、今度の旅の計画は“先ず252号線ありき”でスタートした。
只見線の終端は、新潟県の小出と福島県の会津若松。252号線(柏崎-会津若松)もこれに沿っており、関越道と磐越道にそれぞれICがあるから、首都圏をもう一つの頂点とすると三角形の2辺は自動車道となる。これで一応252号線の山岳ドライブと紅葉を楽しめそうだが、幹線自動車道の占める割合が多く面白くない。ここからオプション検討が始まる。先ずこの路線につながる面白そうな道を探す。直ぐに思い至ったのは“磐梯吾妻スカイライン”。ここは子供たちがまだ小さい頃、夏休みに走っている。典型的な山岳ワインディング・ロード、運転を楽しむには持ってこいだ。高度も高いから10月中旬でも紅葉は間違いないだろう。次いで磐梯レークライン、西吾妻スカイヴァレーなどが周辺ルートとして浮上してくる。これで会津若松側は骨格が出来上がる。一方の小出側はどうか?地図を仔細に調べると、252号線の南側に352号線(柏崎-栃木県河内郡上三川)と言うのがある。小出から奥只見を経て、尾瀬の北側をかすめ、会津と日光を結ぶ道、会津西街道(国道121号線)につながっている。名付けて“樹海ライン”。121号線は川治・鬼怒川から今市に至るのだが、途中で塩原方面に向かうと“日塩もみじライン”を経て今市に行くことも出来る。この選択は当日の状況で決めよう。これで宇都宮を基点・終点とする環状ルートが出来上がった。初日いきなり未知の山岳路(352号線)で夕刻を迎えるのは辛いから、走行方向は反時計廻りとしよう。
次は宿泊場所である。当初三泊を前提にしていたが、大雑把な走行距離が1000km程度と読めたので二泊で考えることにした。初日は自動車道が多いことから裏磐梯から米沢方面まで明るい内に充分行き着ける。三日目の352号線はかなり厳しい道と予想されるので、二日目に出来るだけ走っておきたい。出来れば温泉地が望ましい。こんな条件で候補地を拾った。裏磐梯周辺には多数の温泉があるが、吾妻まで行くと天元台下の白布温泉くらいしかない。もう山形県だ。取り敢えずここを一泊目とする。二日目は走りのメインエヴェント252号線。白布から40km位で252号線に取っつけるので、そこから小出までは150km未満。時速30kmとして6時間位で行けるだろう。チェックインは5時(山間部の日暮れ前)を想定しているので、途中寄り道をしてももう少し走れそうだ。352号線の温泉地は湯之谷、その一番奥にあるのが銀山平。ここまで入っておけば翌日が楽だ。この日の全走行距離は凡そ200km。最終日は日光宇都宮自動車道、東北道とよく整備された自動車道を入れても380km位だから無理が無い。二泊目の宿泊地が決まる。
私の旅の楽しみの大部分は“計画作り”にある。ここまでのプランは8月中旬までかかり、ほぼ固まった。日にちの決定、252号と352号の最新情報入手、主要道を結ぶサブルートの選択、宿泊先決定、昼食場所、ガソリン補給場所、道の駅などの休憩施設、それに観光立寄り候補地点(時間、天候を考慮して)の洗い出しなどが次の調査・検討項目だ。まだまだ楽しい時間はたっぷりある。
(次回;“計画を練る”つづく)
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