2013年5月23日木曜日

美濃・若狭・丹波グランド・ツアー1500kmー1



1.旅のダイジェスト
英国貴族の子弟がその文化的基盤の起源を求めて欧州大陸(特にイタリア訪問がハイライト)を、案内役(家庭教師)と伴に馬車で長期研修旅行をすることを“グランド・ツアー”と呼んでいた。今スポーツカー名に残るGTはその名残である。私のクルマは二人乗りのソフトトップ(幌屋根)、クローズにすると室内空間は極めて密閉感が強く、室内や荷室スペースがゆったりした、セダンやクーペスタイルの、いわゆるGTとはちょっと違うのだが、高速道路でも山岳道路でも緩急自在に操れる点では、本格GTに遜色ない。長距離ドライブをしてこそ真価を発揮できるクルマなのだ。北海道から紀伊半島まであちこち走り回ったドライブ行も6年目に入り、今回はこのクルマの行動域をさらに西へ延ばし、兵庫県の西端、城崎温泉を目指すことにした。
桜はとうに過ぎ、催し物が多い連休も終わった。日本海側の旅行プランの目玉は何と言ってもカニ、しかしそれも4月で終い。2月が旅行のオフシーズンとはよく言われるが、本州では5月中旬から梅雨明けの間も旅人の動きが少ない。平日の観光地は連休の反動でどこも閑古鳥が鳴いている。だからプラン検討の自由度は高く、準備時間もギリギリまで許される。これが時期を決めた理由である。
今まで出かけた、熊野古道や吉野・高野のドライブも、万葉を始め数々の歴史的遺産に触れることが出来たし、距離も1000kmを超す長丁場で、まさにグランド・ツアーであった。今度の旅の訪問地とルートを決めるにあたり候補は種々あったものの、西の方へ行くならやはり自然の景観と歴史・文化のバランスに配慮したい(北や東も独特の文化はあるが、歴史に関しては、圧倒的に関西は厚みがあると思っている)。景観では日本三景の一つ、天橋立が先ず選ばれ、次いで美しく五色に輝くと言われる三方五湖(みかたごこ;泊)、歴史・文化では疎水と盆踊りで有名な郡上八幡(ぐじょうはちまん;泊)、信長の浅井・朝倉攻めにも名を残す、古い城下町越前大野、その西北に位置する禅寺、永平寺を組み合わせ、最後は古い温泉町の街並みと風情を今に留める城崎温泉で疲れを癒すことにした。
旅の楽しみはこれらに加えて、食と道路にもある。カニ・シーズンを外した食はともかく、道路の選択・組み合わせは私にとって最も重要な旅程決定因子。時間重視で選べば自動車専用道路(以後“高速”とする)を最大限利用すればいいのだが、これでは運転の楽しみは大幅に減ずる。山岳道路や海岸道路を組み合わせ、ハンドルさばきや加速減速の緊張感を味わいたい。美濃から越前へは九頭竜川沿いの道をとることにしたし、海岸道路は丹後半島周回を盛り込んだ。
一日目は自宅から郡上八幡まで、ほとんど東名・東海北陸の高速だけで行ける。郡上八幡の市内散策にも充分な時間を取れた。二日目は郡上八幡から三方五湖まで、この日は山岳路を走るわりに見所が多く(九頭竜湖、越前大野、永平寺、三方五湖レインボーライン)、タイトなスケジュールで過ごしたが、距離を抑えていたので(200km弱)、ほぼ予定時刻(5時)に宿にチェックインできた。三日目は今回のハイライト、天橋立と丹後半島、前日とはうって変わって気温が下がり冷える一日だったが、三泊の内本格的な温泉宿泊はここだけ、外湯も含めて冷えた身体を芯まで暖められたのは幸いだった。最終日は城崎から兵庫県を日本海側から瀬戸内にかけて縦断、中国道・山陽道・名神・新名神・東名とつないで、11時間かけて一気に自宅まで戻った。走行距離はほぼ600km、このクルマを持ってから一日の運転距離としては最長であった。
旅全体を振り返れば、いろいろと“想定外”はあったものの(地方高速道の部分開通、ガソリンスタンド(SS)の激減など)、計画した観光スポットは皆訪れることが出来たし、天候も三日目が曇り勝ちで少し寒かったことを除けばまずまず、期待通りの楽しいドライブ行であった。
1500kmにおよんだこのグランド・ツアーの顛末を、計画立案から帰還まで写真を交えながら連載で綴っていくので、ご愛読いただければ幸いである。
(図はクリックすると拡大します)

(次回;訪問地とルート)

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