14. 骨董の町;ゾルグ
修道院を出る頃には天気は急速に回復し、雲間に青空が見えるようになってくる、プロヴァンスの中でも最も人気のある(英国人やドイツ人は競ってこの地に別荘を持ちたがるようだ)リュベロン地方を巡るのに相応しい天候が期待できそうだ。次の目的地はリル・シュル・ラ・ゾルグ(ゾルグ川の島)と言う町だ。
ゾルグはゴルドから西へ20㎞程度いった所で、名前の由来はゾルグ川の複数の支流がこの町を通っていることに由来する。そしてこのゾルグ川はあのシャンソン“河はよんでいる”の歌詞で有名なデュランス川につながっている。さらにデュランス河はこの地方の大河ローヌ河に合流する。つまりゾルグは水利の街なのだ(何かの紹介資料に“フランスの小ヴェニス”とあった)。川や運河は輸送や農業に欠かせぬばかりではなく、動力源(主に繊維業)としても使われてきた。そこここに役目を終えた水車が、観光用に残されている。
バスが町へ着くころには道も乾き、気温も上がって暑いくらいだ。町の外縁にある鉄道駅近くの広場で降りて“島(長径1㎞、短径500m)”の中心部へ向かう。今日のランチはここで摂ることになっているからだ。
目につくのはアンティーク・ショップの多さである。説明では200店近くあるとのこと、なぜこんな小さな町にこれほど多くの店があるのか知らないが、パリに次ぐ数だという。今日は日曜日なので、骨董市も開かれているとのこと。
町の人たちが買い物に出かけてくるような小さな露店市のすぐ前が、目当てのレストラン。“A
Table”とある。英語なのであろうか?(フランス語のAは英語のToだそうです。つまりTo Table;テーブルへどうぞ!の意)家族経営の小さくて感じの良い店。供された料理は、カボチャのスープ、トリ肉をトマトで味付けたもの。リュベロン産のロゼで賞味した。これはあとでの評価になるが、この昼食は今回のツアーで最高の評価を得ることになる。
食後は3時半まで自由行動(2時間くらい)。ほろ酔い気分で、明るい日差しの中を骨董市、運河、水車、街の路地などを巡って歩いた。店や市にある骨董は古い家具や陶磁器などが多いが、中には遊園地の乗り物やモダンアート調のディスプレーなどもある。こんなものが売れるのだろうか?
建物は総じて古い石造りの2,3階建てで道も石畳、高層建築やモダンな家屋は全くなく、伝統的な生活が色濃く残っている。遥か東にはリュベロン山地が遠望できる。市庁舎も警察署も駅も皆こじんまりして可愛い静かな町並みである。夏休みにはヨーロッパじゅうから大勢の避暑客・観光客が集まるようだが、今日はほとんど見かけない。もうオフシーズンなのだろう。
骨董品には全く興味のない私にとって、街中で過ごす楽しみはさして多くはないが、明るく暖かい(やや暑い)天気の下での散策は、フランスの田舎の良さをしみじみ味わうことができた。もう少し時間があったら運河沿いのカフェテラスでワインでも一杯やりながらぼんやり過ごすのが一番だったろうが、この日はまだアヴィニヨン観光が残っている。
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(次回;アヴィニヨン法王庁)