1.新会社創設-10
“どんな会社にするのか” これについてはいろいろな角度から論じられた。既にビジネスの立ち上がっていたプロセス・コンピュータ分野、一時話題になった数理技術を中心に据えたもの、市場拡大速度と量的に大きいプログラム開発、コンピュータそのもので稼ぐ計算サービス、これらは“提供サービス”と言う視点である。いずれも既にグループ向け業務として日常的に長いこと行ってきていることであるから、どこに重点を置くかの考え方に違いがあっても、議論の焦点は合わせやすい。
しかし、グループ内の役割、さらには社会における存在意義まで論じ出すと百家争鳴、今まで考えたこともないような領域に踏み込んでいく。大株主(エッソ/モービル)の意向もあって東燃には子会社が少ない。国策(規制)上やむを得ず設けた東燃タンカーと東燃石油化学を除けばエクソンの技術販売を国内で代行する東燃テクノロジー(TTEC)くらいしか存在しない。プラント運転や工場操業に関する情報技術サービス販売ならばTTECで行うことに、行政上・経営上何ら差し障りはない。しかし、事務系システムも扱うとなると、エンジニア中心のTTEC経営では実態にそぐわないし、人数的にも情報システム部中心になってしまう。
この時期新規事業の“模索”も広く展開しつつあったが、社内の大勢としてこの分社化をそれと同等視(5年、10年先を期待する)する見方は少なく、本業の中核とはかけ離れながらも時代の要請でスタッフが増加してきている部門を“強守”の面から「切り離す」と言うような考えの人も少ないわけではなかった。「分社化を検討するように」と指示したNKHさんもそれについて格別のコメントはしなかったので、本意を探るのは容易でない。
「彼の真意はどこに?」 新規事業のパスファインダー(先導偵察役)を期待されているのではないか?子会社の少ない東燃では管理職や役員の異動先が限られる。役職者若返りのためのポストづくりの会社が欲しいのではないか?いや、本社各部門プロフィットセンター化に最も取り組みやすいので、その先兵を担わせたいのではないか?エクソン本体でも情報システム部門(ECCS;Exxon Computer & Communication Co.)は第2次石油危機の後大幅なリストラが行われた、これは合理化施策の一環ではないか?ビジネスプランが具体化する前にこんな議論を随分したものである。とは言っても不思議と悲観的な雰囲気はなかった。
Z(分社化)計画検討メンバー(管理職)の考え方として、現在の業務を総てひとまとめにして分社化する(できれば工場を含めて)、グループ内業務は今後も総て取り扱うが外部ビジネス拡大によりウェートを置く、決して親会社の天下り受け皿会社にはならない、当面は出向社員で構成するがいずれプロパー社員を採用する、などが早い段階で合意をみた。このような構想を本社・関係会社・工場の関連管理職に開示し、意見集約を行うとともに、部内一般社員にも説明し具体化の方策を探っていった。
ここで大きな問題となるのは、「情報システム開発運用機能は総て新会社に移すのか?工場もか?」と言うことである。本社スリム化に着目する者は全機能移設を主張する一方、ユーザーでも日常的にコンピュータ利用が欠かせない製造部や経理部あるいは工場は何がしかの組織が残ることを希望する。新会社に移る我々もそれが軌道に乗るまでは、本社に調整機能を残したい。それも出来れば各ユーザー部門と等距離に在る独立した部レベルのものである。新たな組織はどんな役割で誰が統率するか?当初は予想だにしなかった課題が次々と湧き上がってくる。
(次回;“新会社創設”つづく)
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