6.小布施
小布施町に寄ろうと思った動機は二つある。一つは2008年夏、十日町から飯山を経て白樺湖方面に向かって走っている時通りがかり、街道沿いの古い街並みの保存状態を目にして、記憶に残っていたこと(松之山・蓼科グランドツーリング;2008年8月2日本欄投稿)。二つ目は昨年知人の紹介で知り合った「そうだ、トマトを植えてみよう!」(今月の本棚-71(2014年7月)にブログアップ)の著者大塚洋一郎さんの開いた農商工連携6次産業(農産物の生産=1次、加工=2次、流通=3次、合計6次)に関するセミナーで、ここの町づくりの話を町長から聞く機会が在り、興味があったからである(因みにこの時のもう一人の講演者は小泉純一郎元首相であった)。
信州中野で国道403号線(谷街道→大笹街道)に入り15分も南下すると、道の両側は統一感のある古い民家や商家が続くようになり、江戸時代に戻ったような雰囲気になっていく。南信の馬篭宿や妻恋宿に似ているが、そこを国道が貫く点で見世物ではなく生活感に満ちているのが良い。予め中心部の町営森の駐車場をナビにセットしておいたが、収容台数が少ないにもかかわらず運よく駐車できる。4時間以内なら300円。駐車場管理事務所は観光案内所も兼ねており、散策用の地図が用意され、管理人が丁寧に説明してくれる。あとのスケジュール(特に善光寺参り)を考えると、徒歩では少し距離のある6次産業センターやフローラルガーデンはパスせざるを得ないようだ。
駐車場を出て先ず街道に出て南へ歩く。当然と言えば当然なのだが、大部分の商店は土産物屋、飲食店、名物の栗を材料にした和菓子店、専ら観光客相手の店がほとんどだ。東へ入る小交差点に交通整理の人が居る。聞けばその奥の欅の大木が在る広場が、街歩きの中心点だと言う。近くに北斎館(美術館)やカフェテラス、大型バス用駐車場が配置されていて、観光客が集まっている。我々もしばらくカフェテラスで人の動きを観察しながら、昼食を含めて3時間程度の行動計画を考えてみる。北へ向かう“栗の小道”、次いで“(個人住居の)オープンガーデンを巡る散策路”、“北斎館”、いくつかの“和菓子店”、それに昼食くらいで時間はいっぱいのようだ。
表街道の一見江戸時代風から徒歩行しかできない小路に入ると、昔のものがそのまま上手に保存されている(見えないところで近代技術が使われているのだろうが)。暑さを増す日中、影が多いのに助けられる。オープンガーデンは少し中心部を離れると、立派な庭園が拝見できるようだが、町中はささやかな小庭園や道沿いの植え込み程度でチョッと物足りない。歴史を誇る銘菓店はどこも外見は時代劇に見るような大店風だが中はいたって現代風。菓子によっては冷やしたり、日持ちを良くするために缶詰や特殊包装になっているのだから、この辺りのバランス感覚は決して悪いものではない。ただ産地だからといって決して安くない(というよりもかなり高価)ことに驚かされた。そんな店の一つでお土産用に“栗かのこ(栗きんとんと同じようなもの)を求める。北斎館を除いて見所を一巡した後、広場に戻り、近くの食堂で“栗ごはん定食”をいただいた。
最後の訪問場所は“北斎館”。小布施と北斎の関係は、晩年この地に住んで、画業の集大成を図ったことによる。赤富士や神奈川沖浪裏代表的な版画ばかりでなく、肉筆画や祭りの屋台装飾の作品なども展示されており、版画ファンとして種々の角度から北斎を学ぶことが出来た。街並み保存は随分見てきたが、日常生活との共存と言う点でここはなかなか高い水準にあるといえる。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;善光寺)
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