2015年9月15日火曜日

魅惑のスペイン-17


10.マドリッド-2
全員そろってのディナーは今夜が最後のものとなる。スペイン料理として日本で最も馴染みのあるパエリアを賞味した後、場所を変えてフラメンコを鑑賞するのがこの夜の予定である。
夕食には昼間の観光とは違いマイクロバスで出かける。場所は市街地中心部の西側、王宮劇場の北にある、“La Paella Real”、その名も“王家のパエリア”と言う店。オフィス街のビルの中にあり、土地勘のない外国人観光客には見つけるのは難しい。スケジュールは完全にスペイン時間、8時半から始まった。前菜などいろいろあったが、メインディッシュ無論パエリア、大きな専用フライパンに出来上がったものをテーブルまで運び、写真撮影後各人に取り分けてくれる。具は日本同様ムール貝やエビなどがトッピングされているが、全体として日本で食するものに比べ具が少ない。味も特に印象に残るようなものではなかった。添乗員のSSKさんにそれを言うと「パエリアは本来東海岸アンダルシア地方(特にバレンシア)の料理。マドリッドは内陸なので魚介類は高価なため少ない」とのこと。ならば彼の地で本場の味をと思わないこともなかった。
デザートが終わったのは10時前、次はいよいよフラメンコである。暗くなった街路をマイクロバスで抜けるのでどこを走っているのか皆目見当がつかない。場所も想像するような歓楽街ではなく、ポツンと暗がりの中にそのタブラオ(演舞場)は在った。しかし、乗車時間を考えるとレストランからそう遠いところではなかった。10時過ぎに着くと、開演は10時半からとのことでしばし飲んで時間を潰す。客席数はカウンター席も含めて40くらい、低い舞台が部屋の一画にある。私の席はその舞台の端に接するほど近い。三々五々観客が集まってくるが、ほとんどは観光客。英語がやたら目立つからアメリカ人が多いようだ。
やがてショウが始まる。リーダーと思しきギタリストが私のすぐ横に位置を占めた。女性の踊り手は一人、男性の踊り手は二人、男女歌手が一人ずつ、ギタリストはリーダーの他にもう一人。思っていたものよりもこじんまりした編成ある。しかし、狭いところでこれだけの人数が歌い踊れば舞台と観客席は直ぐに一体となる。見所では自然と拍手が沸くし、掛け声もかかる。歌詞の意味は全く分からないのだが、悲しいもの、陽気なもの、その雰囲気は確実に伝わってくる。ここの国の人はイスラムとの混血も進み、いわゆる西欧人とはやや異なる風貌の人が多いのだが、メンバーの大半はそれとも違い、背が低くがっちりした体型で目が鋭く大きい。多分ロマ(ジプシー)の血をひいているのだろう。物悲しいメロディーと迫力に、酔いもまわってすっかり惹き込まれ、アッと言う間に終了時刻の12時になってしまった。これは第1回公演、2回目からが地元の人の時間らしい。
帰国してフラメンコに関していくつかのことを知った。本来の本場はアンダルシア地方なのだが、お金になるのは大都会、特にマドリッドやバルセロナ。優れた演奏家・踊り手もそこに集まる。一部の日本人のフラメンコダンサーは極めてレベルが高く、彼の地でも一流の評価を得ているとのこと。そう言えば唯一の女性ダンサーは、身体が華奢で迫力が今一つだった。

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(次回;マドリッド;つづく)


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