2015年9月12日土曜日

魅惑のスペイン-16


10.マドリッド
スペインの首都ではあるが、この都市に対する興味は、パリ、ローマ、ロンドンあるいはガウディに代表されるバルセロナのように高くはなかった。イベリア半島の歴史では何と言ってもローマ帝国とイスラムそれに海洋である。マドリッドはそのいずれにも縁が薄い。それはマドリッドが極めて歴史の新しい首都だからなのである(国を統一する過程でその中心地に建設された;当に半島のど真ん中に位置する)。その浅い歴史の中で、強いて個人的な関心があるのは市民戦争だが、各種の旅行案内を繰っても、あの戦争に関する博物館のようなものは見つけられなかった。一つだけ自由行動時間に訪れてみたいと思ったのは考古学博物館、そこにアルタミラ洞窟のレプリカがあることを知ったからである。これについては次回紹介する。
アトーチャ駅で迎えてくれたのはKMRさんという日本女性。中年のいかにもしっかりした感じの人だ。バルセロナ同様通訳兼ガイドだから市民権がある人なのだろう。
この日の午後の予定は、マドリッド到着後に昼食となっており、バスで連れていかれたのは比較的駅から近い“茶亭(Txa Tei )”という日本レストラン。経営者は日本人のようだがウェイトレスはスペイン人の店。メニューは刺身、茶碗蒸し、天ぷら、塩鮭、鶏の唐揚げなど「何もここまで来てこんなものを」と思うのだが、旅も終わりに近づくと、日本食が恋しい人が多くなるらしい。現地のビジネスマンも食事をしていたから、まずまずの店なのだろうが、日本で評価されるような味ではない。
昼食を終え2時半から市内観光、先ずマドリッドの銀座中央通りとも言えるグランビア通りを西に向かう。通りは確かに賑わっており散策するのに面白そうだ。道は東から西に向かってやや下り坂、下りきったところにスペイン広場があり、ここにロバに乗ったドン・キホーテとサンチョパンサ、後ろに著者のセルバンテスが座して見下ろす彫像がある。その後はバスに乗ったまま王宮、アルムディーナ大聖堂と西側の観光スポットを巡って再び中心部へ向かい、サン・ミゲル市場、ランドマースのプエルタ・デル・ソル(太陽の門広場)を通過して、海神像の噴水を右折、本日のメインイベント、プラド美術館に至る。
アメリカの大都市、モスクワ、ロンドン、パリ、フィレンツェ、ローマ、至るところで美術館を訪れ名作を観ている。とは言っても格別絵画や彫刻に造詣が深いわけではない。比較的具象的な絵は好きで中でも風景画は好みである。あとは「有名作品を観た」との思い出作りに過ぎない。従ってここプラドではゴヤの“裸のマヤ(と合せて“着衣のマヤ”)”とグレコの“聖三位一体”さえしっかり観ておけばいい。キリスト教にゆかりの絵、王族関係者の肖像や群像などが溢れ、一つ一つの絵の歴史や背景を追えばそれなりに面白く、時間も要する美術館ではあるが、1時間程度で見学を終え5時前にはそこを出て、アトーチャ駅近くのホテル、Paseo Del Arte(芸術の道)にチェエクインする。
この後夕食までの自由時間を利用して、ごく近くに在るソフィア王妃芸術センター出かけ、ピカソの“ゲルニカ”やダリ、ミロなどキュビズムや現代アートを鑑賞した。これはこれで宗教画に見飽きた身には楽しい時間であった。

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(次回;マドリッド;つづく)


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