16.長崎
今回の旅の動機は家内の両親の墓参にあるわけだが、“九州へ出かける”となって「やっとチャンスが巡ってきた」と思い立ったのは長崎である。歴史好き、特に海外につながる特異な土地、訪れたことはないが長く憧れの地であるからだ。そう言うと「横浜に住んでいいて?」と返されることがあるが、残念ながら横浜の歴史は幕末以降に限られ、かつあまりに“バタ臭く短い”。これに比べ長崎には平安時代の遣唐使から鎌倉時代の倭寇、室町・江戸時代にいたるキリシタン、徳川鎖国政策に遡る出島の存在まで、長い海外往来の歴史がある。言わば海外と日本の歴史の濃縮された場所、それが私の“長崎観”として作り上げられてきたのである。現実はどうだったか。
国内外を問わず、旅先で興味のある土地をじっくり見聞するためには連泊は必須(最低まる一日観光に当てられる)。ここ長崎だけは2泊することにした。時間を夜も含めて有効に使うには、街の中心地で交通の便の良い所が望ましい。こうして見つけたのがビクトリア・イン長崎である。グレードがここより高い感のあるホテルは何カ所かあったのだが、満室だったり徒歩観光に不便だったりして適当なところが見つからず、何となく英国風の名前に惹かれて調べたところ、ほぼ希望にかなうことが分かった。“ほぼ”の部分はクルマに関することである。先ず専用駐車施設がなく(契約駐車場利用)、またどう見てもクルマで直接乗りつけられるような道は無い(実際は路地に入りこめるが、何と玄関前にクルマ用のターンテーブル、ここで方向転換するのだ!)。しかし、契約駐車場はホテルに隣接、荷物もそれほど大きくないので問題なしとした。場所は銅座町と呼ばれる、チャイナタウンも近い当地第一の繁華街、直近の路面電車駅“西浜町”は市内に四達する路線の要衝、どこへ出かけるにも便利だ。
ホテルは10階建て、繁華街のど真ん中に在るのでそれほど一フロアーの面積は広くなく、一階はこじんまりしたフロント、ロビーそれにバーしかない。入口も前述の正面は路地のような所に面し、裏口?は駐車場のある通りからはバーを通ってフロントに至る。と書くと何か貧相な印象を持つかもしれないが、どこも適度に欧風のクラシカルな雰囲気が漂う、いかにも“イン”という語が相応しい。フロントデスクはスタッフが3人並ぶといっぱい。そこに中年の女性が居りチェックイン手続きを済ます。部屋は3階の角部屋、広さは普通のホテル並み(つまりビジネスホテルより広い)、ツウィンを頼んであったが、何とダブルベッドが二つ!バス・トイレもユニットタイプではない。アメニティ(備品・消耗品)もきちんと整っているし、有線・無線LANも使える。
2泊するのでキャリーバッグに詰めたものを収納部に収め、直ぐ夕食に出かける。先ほどのフロントの女性(あとで支配人と分かる)に「ホテル周辺で中華の適当なところは?」と問うと「中華街がホテルから徒歩の距離にあります。それなのでホテルの近くでは本格的な中華は商売になりません。横浜と比べると小規模ですが、是非チャイナタウンまでお出かけ下さい」とのアドヴァイス。ここのコンシュルジュ機能はこの人に限らず、極めて的確、朝食を除く(朝食はホテルで有機農法野菜などを食す)食事はすべてフロントスタッフの案内に従ったが、すべて当たりだった。
10分ほど西へ歩くと新中華街(古くからの中華街は遥か西、東山手にあったようだが、今はこちらに移ってきている)に達し、沢山の中華レストランがあるのだが、どこに入るべきかは聞いてこなかったので、よく客の入っている“江山楼”と言う店でビールと中華三昧の夕食を摂った。経営者の比較的若い男性はどうやら中国人、しかし給仕をするおばさん達は和服で割烹着姿。何か滑稽感無きにしも非ずだが、料理の味は満足できるものだった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;長崎;つづく)
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