2016年8月5日金曜日

呪われた旅(ナミビア:2016年7月1日~7月8日)-1

“呪われた旅”転載に際して

NGIさんは私の東燃時代の後輩である。修士課程を終えての入社年度は1971年だから多分7歳若いことになるだろう。本来は化学工学を専攻したから、本流のプロセスエンジニアだが、和歌山工場でプロセス制御を担当することになった。その当時私は川崎工場勤務だったから、なぜプロセス・システムズ・エンジニア(PSE)になったのかその経緯は知らない。しかし、数年後年一回事業所持ち回りで開かれるSE会議で彼の発表を聞いて、印象付けられるものがあった。問題解決法が極めて現実的でスマートだったのだ。それからさらに数年後、私が川崎工場のSE課長をしている時、東燃石油化学(TSK)の同僚から「カナダのインペリアルオイル(これも東燃同様カナダ資本とExxonの合弁会社)の石油化学部門でPSEを求めている。TSKには適当な人材がいないので東燃から誰か出せないか?」との問い合わせがあった。この時候補として浮かんだのがNGIさんである。本社を経由して派遣の可能性を質したところOKが出た。トロントに近いそのプラントでの活躍は見事で、先方からも高い評価を得ることができた。単に専門分野の問題解決能力が高いばかりでなく、環境対応能力に優れ、次々と重要で新しい仕事を任されるようになった。加えて現地からの報告“NGIレポート”は単純な技術業務報告書ではなく、彼の地の労働環境やシステムベンダーとの関係なども含む中身の濃いもので、派遣元(TSK)の工場トップから同僚まで次報を心待ちにするほど、面白いものだった。
爾来幾秋霜、NGIさんは中央研究所所長を最後に東燃を定年退職、私の後の横河電機海外営業顧問を見事にこなし、次いで住友化学が社運を賭して取り組んでいるラービグプロジェクトに石油精製とITの経験を買われて、数年前からサウジに単身赴任している。その彼がこの7月のラマダン期の休みを利用して、アフリカ南西端のナミビアに出かけた。これから数回にわたり転載予定の“呪われた旅”はその顛末記である。40年近く前の“カナダからの手紙”を彷彿させる筆致。「70歳前後の歳でこれだけの旅をできる日本人がどれだけいるだろうか?これを公開せずにおくことはもったいない」そんな思いから、ここに本人の許可を得て皆さんに凄まじい旅をお伝えする次第である。

               “呪われた旅”


1.      始まり
それは唐突に始まった。ふと目にした星空の綺麗な国ナミビアの記事。日本なら「そうか」で終わってしまうところだが、今はサウジに居る、それに7月初めにラマダン明けの連休がある。ラマダン明けという事は新月であり、星空はきっと綺麗だろう。今年はサウジ2年目であり、数次ビザが貰えて、8月末までに一度はサウジを離れることを人事からは勧められている。そういった背景から、何となく未知の国、まだ足を踏み入れたことのないアフリカ大陸に行ってみたいという憧れが芽生えた。ヨーロッパもいいが、全く別の世界に触れてみたいという好奇心の方が勝った。

2.      背中を押した悪徳業者
それでもこんな処に一緒に旅したいという酔狂な奴はいないし、ぐずぐずしていた5月半ばのある日、旅を準備する期間も迫ってきたので取敢えずFlightだけでも確保しようと、Trip Advisorから航空券を検索して、Orbitzという業者からナミビアまでの往復チケットを予約した。Webには1日以内なら自由にCancel出来るとあったので、取敢えずと気楽に予約したのだが、これが呪いの始まり。Cancelできない!アメリカの業者であり、連絡もままならない。そんな時に、友人の一人(I君)がナミビアに旅した事があることをFacebookで偶然知った。

3.      旅行日程の決定
71日午前410Jeddah発、78日午前10Jeddah着がConstraintとして設定されているので、この枠の中で旅程を最適化するのが課題となった。I君と連絡を取って助言を受けながら、主な観光地点、宿、移動手段を順次決めて行く。現地のTourも捜したが、適切なものは見つからずレンタカーを借りて移動することにする。国際免許は持っていなかったが、免許証に英語での記述があれば問題ないという事が分かり、サウジの免許でいけることが分かった。今まで、国際免許という特別な取り決めがあるものと思っていたが、どうやらそれは単に日本の免許証に英語の記載がないために英語表記が必要なだけだと分かった。サウジでも前はアラビア語だけの表示であったが、最近英語表記が併記されたために、国際免許が必要なくなったという話を聞いた。日本の閉鎖性はケシカラン。英訳のためだけにあんなに高い金を払わされていたなんて。勿論この話はナミビアだけではなく他の国でも同じである。
いくつかの勘違いもあり、希望の宿を取れない、レンタカーが中々見つからないといった問題もあったが、I君の適切な助言もあり、以下の日程が固まった。
 71日:JeddahWindhoek                                             Windhoek
72日:WindhoekSesriem (350 km)                             Sesriem
 73日:Sesriem観光(Dune                                        Sesriem
 74日:SesriemFish River (400 km)                            Fish River
 75日:Fish River観光                                                    Fish River
 76日:FRQuiver TreeWindhoek (500 km)              Windhoek
77日:WindhoekJohannesburg

 78日:JohannesburgDubaiJeddah

(つづく)

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