-因幡・伯耆・出雲を走る-
5.鳥取砂丘
子供の頃慣れ親しんだ童謡“月の砂漠”のモデルは千葉県御宿の砂浜がモデルだと言われている。確かに観光用のラクダが居るが、ただの広い砂浜で、とても“砂漠”と言えるような所ではない。就職して間もない頃安倍公房原作「砂の女」が映画化された。巨大な蟻地獄のような砂の穴の中に住む女を岸田今日子が演じて話題になった作品である。この映画を観た時、撮影場所は鳥取砂丘に違いないと勝手に思い込んでいた。しかし、今回の旅に先立ち、それを調べてみたら原作のS砂丘は酒田市の庄内砂丘、撮影地は御前崎につながる浜岡砂丘であることを知った。砂漠はともかく、砂丘は日本各地にあるのだ。とは言っても砂丘と言えば何と言っても鳥取砂丘だろう。私は昭和40年(1965年)、一度訪れたことがあるが、鳥取観光となれば必見の場所。
浦富海岸の網代漁港を出たのが9時半頃、海岸沿いの道を進んでいくと昨日の夕刻ナビで振り回された道に出た。この先に広い駐車場が在るのが分かっていたのでそれに向かって進む。10時前に駐車場着。今日は一日500円の料金も惜しくない。ここにビジターセンターが在り、受付の若い女性に案内図をもらって観光要領を説明してもらう。1時間コースと30~40分コースがあり、取っ掛かりはセンターの西側の階段を上った所からとのこと。「ブラタモリに出てきた階段ですか?」と問うとニコッと笑い「そうです」と返してくれた。
階段を上りきるとアッと驚くような光景が目の前に広がる。遥か先に水平線が望めるものの、手前に高く長い砂丘(第2砂丘列)が連なり、そのさらに西方にも短い砂丘(第1砂丘列)が盛り上がっている。当に砂漠である。出発点(6時の位置)から反時計回りに第2砂丘列をぐるっと回るのが1時間コースだが、どう見ても我々の足ではそれ以上かかりそうだ。それに西側は緑地もかなり入り込んできている。そこで、正面に見えている第2列最高点、馬の背(12時の位置)まで東回りで進み、そこから真っ直ぐ出発点に戻るルートを辿ることにする。靴が砂まみれになることを覚悟して、駐車場でスニーカーに履き替えたが、人によっては長靴を履いている人もいるし、それに雪靴のようにかんじきまで付いたものまである。多分貸靴だろう。ラクダが何頭か居たが、これに乗って観光する人は皆無だった。
足下の砂は適度に湿り気もあって、深く足を取られることもなく、平坦な部分はスニーカーで特に問題ないが、傾斜地はさすがに上り下りにやや難儀する。急斜面を避けるとどうしても行程が長くなってしまうが、その分稜線を辿る距離も長くなるので、海と砂丘の成す独特の景観を楽しむ時間も長くなる。馬の背付近は人気スポット。人の入らない写真を撮るタイミングが難しい。頂点に立って西方向を見渡すと、出かけたことは無いがイスラエルやレバノンの写真で見かける沿岸風景を連想させる。どこを見ても日本離れしている。
馬の背から出発点へ真っ直ぐ戻る道は急傾斜でかなり長い。ジグザグのコース取りをしないと怖いくらいだ。そんな道を小学校低学年か幼稚園児のようなグループが登ってくる。逆に上からは高校生らしい集団が駆け降りていく。暖かい晴天の下、大いに元気をもらう。
下の窪地にはまるでオアシスのような水たまりがある。澄んでいるのでチョッと掬って口にしてみる。塩辛くない!ブラタモリで紹介されていたように、これは海水ではなく地下水なのだ。あの番組では、この砂丘地帯はもっと広大だったが農耕地として緑化が進んだで縮小した解説していた。背景はこの地下水にあるのだ。今は保存一筋だが、そんな時代もあったのだ。
駐車場に戻る前に「冷たい飲み物でも」ともう一度ビジターセンターに寄ってみた。隣接して足湯のような場所がある。「こんな所にも温泉?」と近づいてみると、砂を洗い落とす施設だった。ビジターセンター周辺には自動販売機すら見つからない。道路を隔てて砂丘会館(この建物はもう少し工夫してほしかった)があり、ここで土産物や食事がとれるようになっている。それ以外は何もない。土産物屋や飲食店が溢れる観光地とは違った周辺のたたずまいが、良質の観光地を作り上げている。期待通りの鳥取砂丘に大満足。
写真は上から;砂丘地図、砂丘1、砂丘2、海岸、オアシス、砂丘会館
(写真はクリックすると拡大します)
次回;白壁倉庫と赤瓦の倉吉
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