19.ロング・ドライブへの備え ボクスター購入は、その昔数日、長い時では一週間かけて行った長距離ドライブを再現し、それを高性能車で楽しむことである。そこには日帰りや一泊程度の旅とは違う諸々の備えが要る。当時との年齢の違い、車の性能、道路事情全てが大きく違っている。車に慣れるとその準備に掛かった。
先ず行ったことは、カー・ナビゲーション・システムの装着である。実は購入時セールスマンから純正システム取付けを薦められたのだが、こう言う“軟弱な”道具を着けることは、運転そのものの楽しみ(ある種の厳しさも楽しみの内)を阻害するものと考えて止めにした。異国の英国でさえそんなもの無しでやってこられたし、昔のラリードライバーは無論こんなものに頼らず道なき道を走破したと。
しかし、2008年3月浜松で開かれた学会に参加した後、友人とレンタカーを借りて浜名湖近隣を走った際、車にカーナビが装備されており、その威力を実感した。航空自衛隊浜松基地への地方道案内、市内での多車線進路指示など、地図だけでは限界があるきめ細かなサービスにすっかり魅せられてしまい、これからの未知の土地への旅には必須の備えと導入を決意した。機種は、ポルシェ車への実績からパイオニアの「楽ナビ」にした。6月中旬これが取り付けられ、近隣ドライブで取り扱い要領を少しづつ学習していった。
ボクスターによる本格的な長距離ドライブの最初の予行は、7月に行った新潟・信州旅行である(松之山・蓼科グランドツーリング参照;ブログの該当アイテムをクリックしても上手くつながりません。“滞英記-3”をクリックし、その記事の最後のところにある“前の投稿”をクリックするとそこへ行けます)。
その時の主な狙いは、山岳ドライブとこのカーナビの取り扱いだった。我が家から関越自動車道を経て日本一の豪雪地帯松之山に至るルートは高速道路・主要地方道・山岳道路と多彩な道路環境でのドライブを楽しめる。また、松之山から信濃川に沿う主要地方道、117号線に出る405号線は冬季通行禁止になる厳しい道で、山岳ドライブを試すのにはもってこいの道だ(結局117号線との合流点、津南まで一台の車とも行き交わなかった)。飯山辺りから蓼科に至るルートは選択肢が多い。ここでは一般道だけを走ることにしたが、それでも幾つかのルートから選ぶことになる。実際にこの地方を走ってみると農道などの整備もよく進んでおり、一般道と変わらない。立寄り地点の設定や、音声による方向指示の癖を十分会得しないままカーナビに頼る運転で随分ミスを犯した。
蓼科から小海線に沿う佐久甲州街道を経て中央道の須玉に至る道は、都会に近く別荘地なども多いことから、山岳道路とは言えよく整備されているので、高速でアプ・アンド・ダウンするワインディング・ロードを駆け抜ける楽しみがある。しかし、要注意はブレーキのフェード現象である。嘗てこの道をBMW-320で走った際、中央道の半ばからこれが激しくなり、ハンドブレーキを使いながら、何とか自宅まで辿り着いた恐ろしい思いは今でも忘れられない。AT車による初めての長距離山岳ドライブで、安曇野を出発美ヶ原へ出てビーナスライン、メルヘン街道を通って佐久甲州街道へ出るハード・ドライブ。この時はそれがフェード現象とは気がつかなかった。
フェード現象とは、ブレーキを酷使し過ぎてブレーキローターが熱くなり、またディスクパッド(摩擦材)も加熱されガスが発生し、そのガスがブレーキローターとディスクパッドの間に挟まって、ローターとパッドがきちんと擦い合う事が出来無くなる現象。特にAT車ではエンジンブレーキの効きが弱いので、どうしてもブレーキに頼る運転になる。
ボクスターのティプトロニックも原理的にはATである上に、スポーツカー運転の楽しみの一つは速度の緩急切り替えにあるので、ブレーキへの負担は嫌でも増す。今回は基点が蓼科で時間的な余裕が十分あるので、フェードしたら途中で長時間休むつもりで、エンジンブレーキを併用しながら頻繁にブレーキを踏んで走ってみた。結果は全くこの現象は起きなかった。さすが代表的なスポーツカーは違う、とこの車への信頼性を確認した。
二度目の予行は、11月に出かけた奥州平泉へのドライブである。仙台で開かれた学会参加が目的だったが、今回の主題となる紀伊半島ドライブが具体的な対象として浮かび上がっていたので、それへのテストを兼ねることとした。“高速道路を、一日どのくらいの距離、どのくらいの時間運転できるか”がテーマである。仙台の牛タン、中尊寺での紅葉狩り、秋保温泉などを楽しみつつ、ひたすら東北道・磐越道・常磐道を走った。
いずれのルートを採るにしても、高速道路だけなら、横浜~和歌山間は十分一日で走りきれるとの自信を得た。
(写真はダブルクリックすると拡大できます)
2009年9月3日木曜日
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