2011年1月17日月曜日

黒部・飛騨を駆ける-7(安房峠)

 1969年3月雪に阻まれて以来、いつかこの峠を自分の車を運転して超えたいと思い続けていた。この日と同じように高山を出発してしばらく走ると平湯峠にとりつく辺りで道路の両側は雪の壁になり、しばらくするとブルドーザが雪かきをしていた。作業員に聞くと、連休明けの開通になるという。当時は今のように道路事情を簡単に調べることができなかったので、予期せぬ出来事だった。その日のゴールは今回とほぼ同じ白馬だった(今回は大町だが)。仕方なく神通川を下り、富山から糸魚川を経て何とか着くことができた。
 その後この方面を走る機会は無かった。この峠にトンネルが穿たれたことを知っていたが、もしこの地方を走るならもう一度あのルートにチャレンジするつもりであった。そしてついにその時がやってきたのである。
 11時過ぎに高山を出発、158号線は直ぐに上りになる。雨は止んでいるが雲は低い。標高が上がり、道の両側の人家が途絶える頃から霧が出始める。カーブの続く道をフォグランプを点灯し、慎重に走っていく。平湯峠は今では安房峠同様トンネルで抜けられるので、楽しみは後に残し、こちらを走ることにする。トンネルの標高は1445m、国内最高の高さである。トンネルを出てしばらく上ると珍しくこんな山の中に信号機がある。旧道、安房道路(トンネル)と奥飛騨温泉へ向かう国道471号線が交わる地点なのだ。晴れていれば展望がききそうな場所だが低い雲に覆われてそれは叶わない。そこに広い駐車場があるドライブインがあったので、ここで昼食とした。間もなく県境を超えて長野県に入るのだがここはまだ岐阜県、飛騨牛の焼肉定食を食べる。
 小一時間休憩した後ここから旧道を峠を目指して出発する。幸いこの休憩の間少し天候が回復、雲や霧が走行を妨げることは無くなった。しかし旧道はほとんと走る車が無いのであろう落ち葉が狭い道を埋めている。スリップが恐い。おまけに曲がりは急で、カーブでの行き違いは不可能だ。昔はこの道が飛騨と信濃を結ぶ唯一の幹線道路、大型トラック・バスは何度か切り返ししなければカーブを抜けられなかったという。そんな大型車が走ることを想像することすら容易ではない。上も下も紅葉に覆われた道を走っていて、この道の中間点中ノ湯まで行き交ったのは軽自動車と小型のライトバン二台だった。中ノ湯は焼岳の登山口にもなっているので、ここまでは松本側からバスが来ているようだが、そのバスとも一度も出会わなかった。さらに下ると安房トンネル道路と交わりやがて上高地への分岐点に至り、道路は一般の国道並みの仕様に戻る。梓川の上流にはダムもありそこからの紅葉もなかなかのものであった。あとはだらだらと野麦街道(158号線)を梓川に沿って下り、安曇野に達した後は、初日とほぼ同じルートで再び糸魚川街道を走って、4時過ぎ大町プリンスホテルに到着した。
 今回の旅は、紅葉を楽しむことがひとつの目的であった。その点でこの峠越えは正解であった。もしトンネルを抜けていたら、これを楽しむことは出来なかったに相違ない。
(次回;黒部アルペンルート)
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