2015年8月9日日曜日

魅惑のスペイン-8


5.グラナダ-2
イベリア半島にイスラムが進出するのは8世紀、それから700年後レコンキスタ(再征服)でキリスト教徒の支配下になるのが1492年(コロンブスのアメリカ大陸発見と同じ年)。スペインにヨーロッパで最もイスラムが色濃く残るのはこの歴史に依る。今回の旅では数々の史跡を観るのが最大の楽しみだ。その取っ掛かりがここグラナダに在る、アルハンブラ宮殿である。
前回グラナダの地形を大雑把に紹介したように、宮殿(と言うか城塞と言うか)は旧市街の南東の丘の上に在る。グラナダに首都を定めたナスル朝の王宮+城塞として13世紀から15世紀にかけて作り上げられたものである。レコンキスタの後モスクは教会に変えられ、カルロス5世宮殿(未完)や修道院などが建設される。
我々がバスを降りたところは新門広場、入場パビリオンの近くには古い建造物はなく糸杉の続く道を南側の城壁に沿って西に進む。ここら辺の庭造りはイスラムでではなくヨーロッパ式のものである。しばらく進むとやっと建物群が現れる。最初に目につくのはパラドール・サンフランシスコ、かつての役所か何かを復元改築したホテルである。さらに進むといよいよイスラム時代に踏み込むわけだ。ここからは事前時間予約制(我々の入場時刻は4時半)、今日のスケジュールはこれに合せて組まれていたのである。最初に案内されるのはカルロス5世宮殿、メスアルの間。ここはキリスト教治下に建設が始まったものだから様式はギリシャ風、本当はドームの屋根が付くのだが、未完のままで空が見えている。
そこを出ると一旦城塞(アルカサーバ)から北側にある丘(アルバイシーン)を見渡す回廊に出る。そしていよいよイスラム時代の宮殿に入る。沢山の円柱、アーチ形の窓、モザイク模様に貼られたタイル、アラビア文字を図形化した細かな装飾、メッカの方向を示すお祈りの間、そこには鍾乳石が無数に垂れ下がったような独特の加工が施されている。カソリックのおどろおどろしい内装と比べ何と清々しいことか!少なくとも美術の面からは、好みとして比較にならない。この観点から“偶像崇拝禁止”は大歓迎である。
アラヤーネスの中庭がまた素晴らしい!水が良く生かされている。イスラムの建築は建物と庭がひとつながりになっており、そのコンビネーションが絶妙である。
別の中庭には偶像崇拝禁止に逆らって12頭のライオンに支えられた噴水がある。この中庭を囲む部屋は王の私室群、いわばハーレムらしい。
観光客でごった返す現実を離れ、来し方を思い起こせば、室内には絨毯が敷き詰められ、開口部には垂れ幕が張られ、そこここにはクッションが置かれて、直に座して歓談したり、庭を眺めたりしていたのであろう。西洋とも東洋とも異なる時空がそこに存在していたのである。
総てを見終りパビリオンに戻りバスでホテルに帰り着いたのは6時過ぎ、わずか2時間弱では駆け足での見学だったが、はるばる出かけてきた甲斐のある観光だった。
20時、ホテルから歩いて5分くらいのレストランでディナー、メニューはシーフード・フリッター(魚介類のフライ)。店の雰囲気はまずまずだったが、料理は今一(私は皆平らげたが多くの人が残していた)。さすがにシェリー酒(へレス)はドライで口に合った。
1時間半ほどで食事を終えると、今度は小型バスに乗ってアルハンブラの向かいにある旧市街の丘、アルバイシーンへ出かけ、そこからアルハンブラ宮殿のライトアップを眺めるのだ。瞼に焼き付いたものは幻想的なものだったが、撮影はカメラを三脚に固定し、長時間露光するマニュアル操作でなければきれいに再現できず、ディジカメでは残念ながら公開できるようなものではなかった。

写真はクリックすると拡大します


(次回;コルドバ)

0 件のコメント: