2009年9月17日木曜日

センチメンタル・ロング・ドライブ-48年と1400kmの旅-(21)

21.伊勢・志摩を目指して-1
 一週間前から天気予報の見所が変わる。名古屋や大阪をチェックするようになったのだ。快晴続きとはいかないようだが、概ね雲と太陽が重なっている。22日だけ雲と傘マーク、この日は紀州山中を走る日だ。半島深奥部の雨はそれなりに風情があり“らしさ”を味わうのに悪くない。風も特に強くならないようだ。それでも出発の朝必ず伊勢湾フェリーの運行状況だけは要確認だ。
 平日(往路)と休日(復路)の道路状況もインターネットで同じように一週間前から調べるが酷い渋滞はなさそうだ。
 昔からそうなのだがエッソ・モービル(特にエッソ)の販売戦略は徹底して都市中心である(和歌山県を除く)。これは長距離ドライブをするものにとって泣き所だ。今回消費するガソリンの量を考えると割引(1割)の有無は大きい。ルート上のエッソ・モービル・ゼネラルのスタンドの所在地を、これもインターネットで調べると、東名下りは全く無い。一般道にはそこそこ在るものの、決して多くは無いし回り道になる。燃費実績に基づけば、伊勢・志摩まで無給油で行けるが、万が一を考え渥美半島を入念にチェックする。幸いルートから少し寄り道になるものの、トヨタ田原工場の近くにゼネラルを見つけることが出来た。
 当日の朝、横浜は曇り空だった。自宅近くの堀口・能見台から横々道路に入り、保土ヶ谷バイパスを経て東名町田・横浜で東名に乗る。ここから御殿場までは頻繁に利用しているので緊張感も無い。三車線の道は渋滞こそないものの、厚木までは前後左右埋まっている。特に長距離の大型トラックが多く、車高の低いスポーツカーには最低の走行環境だ。
 秦野中井を過ぎ大井松田にかかるころからアップダウンが始まり、トラックとの差がつけやすくなる。雲が晴れて冠雪の残る富士山が見えてくると間もなく御殿場、ここから先を自分の車で走るのは初めてである。富士の裾野を巡ってから由比付近ではほとんど海上を走る。しばしば台風時には不通になるここも今日は長閑なドライブ日和。自宅を発って一気に日本平のパーキングエリアまで達した。
 ここで一休みしてカーナビをセットする。目的地は伊良湖岬だ。事前のナビタイマー(PC)では豊川ICまで東名を走り、そこから151号線を南下、259号線に出て伊良湖へ向かう道を選んだが、カーナビでは浜松西ICで降りて65号線経由で浜名バイパスを走るルートを選んでくる。どうやらカーナビの方が“後戻り”に対する許容度が厳しいようだ。これに従うことにする。
 浜名バイパスが終わる潮見坂で1号線に別れ、伊良湖岬に向かう道路に入ると、やがて道路標識に“42”が現れた。あの紀伊半島外縁を走る国道である。こんな所へつながっているとは全く予想していなかった。前回渥美半島を走ったときは、豊橋から半島北側、三河湾沿いの259号線で伊良湖まで行ったので気がつかなかったのだ。初めての道、和歌山は遥か先だが何故か気持ちが楽になる。遠州灘に沿うこの道は大きな町もなく、交通量は少ない。時折低い防砂林の切れ目から大海原をチラッと見せながら、緩やかなアップダウンを繰り返して伊良湖岬まで、気分安らぐドライブを楽しませてくれた。
 12時少し前岬の先端にある、広大なフェリー乗り場に着いた。あらかじめ調べておいた12時10分発に乗れるはずだ。既に船は接岸しているが、ほとんど待つ車は無い。中型のトラック、小型乗用車が各1台ぽつんと離れてとまっているだけである。出札口へ行くと「あと10分ぐらいで乗船です」と言う。他人事ながら「これじゃ商売に全くならない」と心配になる。私の場合、同乗者1名の運賃(1500円)を含めて8,000円である。結局乗り込んだ車は、後からやってきた軽自動車1台を含めてたった4台である。この他バイク、サイクリングや徒歩旅行者が数名加わった。船は“知多丸”;総トン数2330トン、バス11台、乗用車43台、定員500人を運べるのだから、今回は空荷同然の航海である。 伊勢湾の空は晴れ、風もほとんど無く、絶好の航海日和。ディーゼルエンジンの音だけが低音で響く船室でしばしまどろむ。約一時間の航海は4時間連続運転の疲れを癒すには格好の中休みだ。「神島が左舷に見えます」と放送があったが41年前のあの「潮騒」のトキメキは無かった。1時過ぎ船は静かに鳥羽港に着いた。

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