2012年2月27日月曜日

決断科学ノート-107(自動車を巡る話題-1;エンジン開発)



 
決断科学ノートは、ここのところ東燃時代に関わった事例紹介が続きました。お蔭さまで読者の方々から沢山のレスポンスをいただきました。これからも折を見て取り上げていく予定です。しかし、身近なものが続き過ぎるのもマンネリに陥る恐れ大です。しばらく事例から離れ企業経営に関わる話題(必ずしも直接“決断”に関わるものばかりではありませんが)を取り上げてみようと思います。手始めに、大好きな“自動車”をテーマにスタートしますのでご一覧いただき、コメントがいただければ幸いです。


226日(日曜日)の日経新聞一面「ニッポンの企業力」に“ハイブリッドの死角-車もガラパゴス化の懸念-”と言う見出しが大書きされていた。記事には、自動車エンスー(エンスージアジスト;愛好者)と自他とも(?)に認める私にとって、以前から知人・友人に語っていたハイブリッド・エンジンの将来性(市場における位置と純粋の内燃機関のさらなる発展の可能性)に対する疑念を具体的に示す数字とキーワードが並んでいた。
曰く、今年一月の国内自動車販売数に占めるハイブリッド車の比率は2割を超えるが、世界最大の自動車市場、中国では約1800万台の内3000台に過ぎず、米国でも30万台と全体の2%程度だったと。
初代プリウスが発表されたとき、面白いアイディアだとは思ったが、一方で複雑なメカニズムに、コストやメンテナンスに不安を感じた。また、試乗してみて運転の面白味(人車一体感)が全く感じられず、生活の道具であると同時にドライブを楽しむ文化のあるヨーロッパでは、自動車発祥の地を自負するプライドも含めて、普及しないだろうと直感した。確かにダイムラーやポルシェがハイブリッド車を市販しているが、それは地球環境問題へのポーズの域を脱していないし、ブレーキ回生エネルギーを電池に蓄え補助(あるいは瞬発)動力に使う単純なメカニズムに留まっている。
欧州勢が環境問題の提起者だしそれに真剣に取り組んでいることは間違いないが、その主戦場は内燃機関の更なる効率アップのための技術開発である。早くから小型ディーゼルを実用化してきた彼らは(当初は軽油の価格が安いことが大きな理由だった)、先ず原理的に熱効率の良い(高圧で燃焼させるため)ディーゼルをガソリン車に置き換えていく流れをつくり(既に50%を超えている)、次いで同じ考えをガソリンエンジンに敷衍し、電子制御(着火のタイミングや段階的着火)や過給(燃焼用の空気をやや過剰に供給する;自然吸気では不十分)方式を工夫して、一回り小さいエンジン(ダウンサイジング)で従来以上の馬力を稼ぐ(それによって総CO2排出量が減る)のである。これに先鞭をつけたのはフォルクスワーゲン(VW)で2005年に発売されたゴルフGTに搭載されたTSITurbo charged Stratified Injection;ガソリン直噴)エンジンがその嚆矢である。
嘗て(1970年代)マスキー法旋風が吹き荒れたとき、ホンダはCVCCエンジンを開発、見事に難しい排ガス規制を乗り越えた。それまでもホンダの評価はエンジンにあった。そのホンダも今やハイブリッドを売り物にしている(次世代NSX;高性能スポーツカーまでも)。また、省燃費エンジンとして高い評価を得ていたリーン・バーンエンジンを多くの車に搭載していたトヨタは、完全にハイブリッドに舵を切ったように見える。日産と三菱は電気自動車が客寄せパンダ。スズキがVWとの合弁を解消しフィアットの小型ディーゼルを導入しようとしている。
どこも正面から、内燃機関だけで、環境問題解決に当たる意欲が見られない中で、マツダが孤軍奮闘している。ハイブリッドに劣らぬ燃費を達成したスカイアクティブ・エンジンがそれだ。世界で唯一ロータリー・エンジンを実用に供したDNAがここに繋がっているのだろうか。ガラパゴスにならぬために、このエンジンとビジネスが成功することを願って止まない。
(この項完)

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