2012年11月22日木曜日

決断科学ノート-124(メインフレームを替える-18;IBM・STI参加-3)



この研修ツアーに参加するに際して、個人的な課題をいくつか用意することにした。第一はこの秋和歌山工場で稼動開始するTCSTonen Control System)の中核を成す、IBM/Exxon共同開発のACSAdvanced Control System;アプリケーション・ソフトウェア・パッケージの一つ)の更なる研究開発状況。第二は計算機械から言語処理システムへの進展の動き(特に日本語処理)、それにIBM汎用機(MF)を支える個別技術(例えば半導体や演算装置など)の動向である。
第一のACSに関しては、訪問先や研修参加メンバー構成(プロコン分野の経験者はほとんど居ない)からあまり期待できないことは予想できたが、結果は全くその通りであった。プラント運転・制御システムなど、いくらMFの上で動くものとはいえ、極めて特殊な世界で、ACSと言う言葉さえ、航空会社向けの“Air line Control System”と取り違えられるくらいだった(多分JALからの参加者があったからだろう)。このことを含めて、IBMが製造現場のシステムについては、総じて弱く、唯一組立加工業のフロアーレベル操業情報をMFに吸い上げるための特殊な通信システム(SCADASupervisory Control And Data Acquisition)の研究開発情報を、ラーレー事業所で得られたくらいであった。因みに、既にここで作られた製品を導入しているマツダからの参加者、OKDさんはVIP扱いで、昼食も事業所幹部が数人同席するくらいだった。
第二の言語処理問題は主に基礎研究に関わるもので、ワトソン研究所でいくつかの話を聞くことが出来た。一つは現在使われているインターネット利用の概念に近い研究。当時社内で閉じた、電話回線を使った電子メールがやっと実用化された時代だけに、どんな言語もどこからでも授受出来るシステムの概念は新鮮なものだった。もう一つは音声入力処理に関する研究で、前者に比べるとより基礎研究の領域の話で、IBM研究活動の高さ・広さを知ることにはなったが、直ぐに実用化されるようなものでないことも確認する結果になった。こちらの関心はもっと現実に近い、例えば富士通がO/Sレベルで作り上げた日本語処理システム、JEFのようなものを期待したのだが、製品開発に近いそのような研究はここでは行われていなかった。“日本語処理研究はどこで扱われているのだろう?”この疑問は解の無いまま終わることになる。
MFとその周辺の個別技術についてはいくつかの印象的な場面や話に直面することが出来た。
ICは既に実用段階にありことさら珍しい技術・製品ではなかったが、それは汎用製品であり、自社製品向けのカストマイズドICの世界はどこもなかなか手の内を見せないものである。しかし、イーストフィッシュキルはこの種のICを作る工場だったから、大規模な設備で自家用ICを作る、その底力は“さすが!”の感を深くした(最も見せてくれたのは、“工場見学コース”に過ぎないのだが)。
二つ目はポケプシーのMF製造工場である。ここでは組み立て中のMFを間近で見ることが出来、作業員に質問することさえ許された。特に、目を引いたのは、最も高性能の水冷式演算装置の生産が多かったことである。「まるで化学プラントだね!」とコメントすると「水もIBM特製だよ」と答えが返ってきた。国産のMFに水冷式が無かったこともあり、これは次期システム検討の大きな問題意識になっていく。この他にも大量の企業情報を高速で処理する大型記憶装置に関する知見をサンノゼ事業所で得ることができたが、これは次回もう少し詳しく紹介する。

(次回;IBMSTI参加;つづく)

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