2013年12月31日火曜日

今月の本棚-64(2013年12月分)


<今月読んだ本>
1)第二次世界大戦影の主役(ポール・ケネディ);日本経済新聞出版社
2)鉄道と刑法のはなし(和田俊憲);NHK出版(新書)
3)EU崩壊(木村正人);新潮社(新書)
4)ヒラノ教授の論文必勝法(今野浩);中央公論新社(ラクレ新書)
5)歴史という武器(山内昌之); 文芸春秋社
6)駅名で読む江戸・東京(大石学);PHP研究所(新書)

<愚評昧説>
1)第二次世界大戦影の主役
10月初めフランス旅行から帰ると、メールに同期入社のFJMさんから「君にピッタリの本があった。既に読んだから次に会うとき持っていく」とあった。3500円もする本をいただき、書き込みと赤線だらけにしてしまった。
著者は現代を代表する世界的な歴史学者。話題作は1980年代半ばに発表された「大国の興亡」。ポイントは“大国であることを維持するため過剰軍事力強化で経済が衰退していく”ということにある。その後の米ソは当にその通りとなった。この本で扱われる時間軸は16世紀から20世紀までの500年間という長い期間だが、本書は1942年末(カサブランカ会談で連合国側の大戦略がまとまる。ただしこの段階では具体策は全くない)から1944年盛夏(ノルマンジー上陸、サイパン島陥落などに依り連合国側の勝利が見えてくる)までという2年に満たない短い期間である。軍事が中心テーマではあることは同じでも、“歴史に学ぶ”内容が全く異なってくる。前著が主に国際関係・安全保障に関する政治・経済的な課題への取り組みに資するのに対して、本書は環境変化の速い企業経営や研究・技術開発マネージメントに参考になるのではないか、これが読後感である(つまりビジネスマンにより役に立つ)。
原題は「Engineers of Victory」。訳では “影の主役”としているが、これだけだとスパイ・密使や諜報機関あるいはゲリラや特殊部隊のような印象を与える。副題の“勝利を実現した革新者たち”こそ主題に相応しい。Engineer” という言葉について著者は序において「工学の分野の理学士(この訳はおかしい;工学士とすべきだろう)や博士のみを指すわけではない」とし“技術や技能の工夫の才によって大きな物事を行う人間”と定義している。つまり狭義のエンジニアだけでなく技術を育て、それを使いこなした軍人や政治家、経営者、組織管理者にも焦点を当てることをことわっている。そしてここが本書の肝である。著者が本書で主張することは、戦いの勝利は政治指導者や将軍あるいは革新兵器によってもたらされるのではなく、組織運営の効率化、戦訓のフィードバックと絶えざる改善努力、異才の登用などに負うところが大きかったと言うことである。
取り上げられる戦場は五つ;1)U-ボートと輸送船団(大西洋の戦い;探知技術、爆雷、護衛空母)、2)航空優勢確保(バトル・オブ・ブリテン、戦略爆撃の効果と護衛戦闘機)、3)電撃戦とその阻止(北アフリカ、独ソ戦;T-34戦車、対戦車兵器)、4)大陸反攻作戦(ノルマンジー上陸作戦;水陸統合作戦組織、上陸作戦用特殊兵器)、5)“距離の暴威”(主に渡洋対日戦;海兵隊と海軍建設大隊、B29開発・生産)。登場する戦場、兵器、上級指揮官いずれもなじみのものだが、これらが脚光を浴びている舞台裏の仕組みを詳細に考察するところに今までの戦史とは異なる第2次世界大戦が見えてくるのだ。
例えば太平洋の島々を攻め上がってくる米軍の基地・橋頭堡建設を一手に引き受けた海軍建設大隊の誕生と活躍は海兵隊やB29の陰に隠れてあまり知られていないが、この部隊がなければ日本国防圏制圧の時間ははるかにかかったと著者は見ている。この部隊の創設者、ベン・モリールは大学で土木工学を専攻し第一次世界大戦時海軍に入営、太平洋戦争勃発時は海軍工兵隊司令官、建設大隊の創設をルーズヴェルトに進言し、実現させ、建設技術者・技能者を大動員する。自身最終的に大将まで昇進するが、ここまで上り詰めた非兵科将校は後にも先にも彼しかいない(旧日本軍でも技術将校の最高位は中将)。本書の面白さはこのような人物が次々と現れるところにあり、英雄譚とは異なる歴史を見つめる楽しみを味わうことが出来た。
しかし、こまでならノンフィクション作家やジャーナリストでも書ける。歴史家としてはこれらを普遍化して勝因の根源を探る必要がある。これが終章の“歴史上の問題解決”である。従来の分析では“戦域の広がりに対する資源・生産力の圧倒的な違い”に結論を持ってくるものが過半だが、著者はそれ以上に“問題解決にいそしむことを容認する余地(例えば『過ちから学ぶ姿勢(すぐに対応する)を“奨励する文化”』;独ソ戦の初期大敗したソ連がT-34を反攻主力兵器に仕上げ・運用し、盛り返すプロセスではあのスターリンでさえ柔軟な姿勢を見せている)、つまり軍や政治の文化”に因があるとしている(これ以外にも“新機軸を用いる文化”、“情報循環”など)。これは企業経営にも同様に敷衍できる考え方であろう。
訳者は小説の翻訳では一級の人だが、軍事は専門外なのか今一つぴったりこないところが気になった。

2)鉄道と刑法のはなし
買った本が書評に出るのは一寸うれしい。本の目利きになったような気分を味わえるのだ。この本を書店で目にした時鉄道ものとまるで関係のない“刑法”に惹きつけられた。法律関係の世界にはほとんど関係したことはないし(厳密には、自動車免許取得のための道路交通法と計量士資格取得のために計量法を学んだが)興味もないので、おそらく蔵書の中に一冊もないだろう(前記の法律解説書は合格とともに処分した)。しかしそれが大好きな鉄道と結びついたことで「読んでみようか」と言うことになった。その本が今月22日新聞(朝日)書評欄(とは言っても著者紹介だが)に取り上げられた。
著者は大学(慶応)の法学大学院教授である。中学・高校から鉄道同好研究会に属していた筋金入りの鉄ちゃん。小分類では“時刻表鉄(他に、乗り鉄、撮り鉄など各種あり)”で、時刻表を眺めながらあれこれ考えるのが趣味のようだ。導入の書き出しによれば、時刻表をつないである目的の旅を作り上げる行為は、事件に断を下すために法律論理を構築することと極めて近いとのこと。「そんなものかな~」と読みだした。“時刻表と判決プロセス”の類似性はややこじつけの感無きにしも非ずだったが、刑法と言う縁の薄い世界の考え方や仕組みを知るという点において、大好きな鉄道を舞台とするだけに、取っ付き易い書物であった。
無賃乗車、キセル、車内強盗・殺人、政治家暗殺、セクハラ、荷扱い車掌の窃盗、運転事故、駅内利権争い(駅弁)、路線敷設に関する贈収賄、労働争議など広範な事例を、訴える側の主張、訴えられた側の反論(弁護)、判決結果、を手短に著者の論評も加えながら(判決結果を否とするものもある)解説していく。取り上げる時代も鉄道黎明期から現代までにわたるので、法律適用が世相の変化を反映しているところも面白い(例えは、荷扱い車掌の窃盗などは、手荷物を事前に駅で預け列車に連結された荷物車に搭載し、下車駅で受け取るところから起こる事件だが、現在はこのような制度はないので、この荷扱いの方法を説明しながら事件の顛末を語る)。ただし、“鉄道もの”としての内容は薄いので、その点ではやや物足りなさが残った。
著者は当初あくまでも鉄ちゃんは趣味と割り切っていたのだが、ある時ふとこれは講義に使えるのではないかと考え教材に仕上げ、成功させている。私の好む論語の一説「之を知るものはこれを好むものに如かず。之を好むものはこれを楽しむものに如かず」を地でいった著者の生き方に大いに共感を覚えた。「こういう授業は楽しいだろうな~」

3)EU崩壊
EUの発足(199311月)少し前の雑誌TIMEの表紙は、城壁をめぐらしたEUが米国や日本の侵攻を防いでいる戯画だった。強力な地域国家連合が出来、保護貿易が始まるのではないか?これが当時の世界的なEUに対する見方であった。事実欧州人の社会学者の中にそんな主張をする人も居た(確かフランス人だったように記憶する)。幸い閉鎖的な貿易障壁は築かれなかったものの、旧東欧圏の取り込み、統一通貨ユーロの誕生、欧州中央銀行の発足、構成国の数を力に域内基準を国際基準化するなど、欧州中心の世界構築にまい進しているように見える。
しかし、通貨統合に英国が参加しなかったり、ギリシャ危機などに見るように、財政政策は各国の主権に残されるなど、政治面は各国の事情が色濃く反映され、強固な国家連合にはなっていないのが現実である。本書はこのEUの持つ脆弱性を広義の経済面(財政・金融・通貨・労働(移民)など)から考察し、“所期の理想は崩壊に向かいつつある”と断じ、その背景・要因を探り、具体的に解説したものである。
著者は元産経新聞ロンドン支局長、彼の地に6年滞在した国際ジャーナリストで、今でも活動の中心をロンドンに置いている。このことから、本書を読む上で若干の注意が必要ではないかと感じた。それは、英国が他の欧州大陸国家とはEUに対するスタンスが異なる(政治統合まで期待していない。大陸国家も違和感をもっている;欧州よりは米国の同盟国)ことである。つまり、より統合度の高いEU構築を主張する独仏に対してやや批判的な見方をしがちだという点で、これは2007年英国に滞在した私自身の体験からも感じられる。
ただ、この英国バイアスを考慮しても構成国間の政治・経済・文化の違いは大きく、二極(米ソ)対立の中で第3極確立を目指した時代とは異なる現代の世界情勢の下では、むしろこの違いが際立ってきており“崩壊”の危機が決してありえないことではないことを詳細な情報やデータで教えてくれる。
例えば“ギリシャ危機”である。ギリシャの放漫財政策があの危機をもたらしたと言うのはその通りだが、粉飾財政の歴史は長く、1990年代には英国の投資会社がこのことに気付き警鐘を鳴らしていた(「ギリシャはユーロに参加する条件を満たしていない」)にも関わらず、ギリシャ政府も他の加盟国もこれに一顧だにしなかった。これを対GDP財政赤字率、インフレ率、失業率、徴税率などを並べて、戦後のギリシャ政治・経済の変遷を辿りながら、成るべくして成った“(政治家が国民におもねる)欲望民主主義”の末路を語っていく。ドイツのような“(国民も政治家も独立不羈の精神を堅持しようとする)自由主義的民主主義”とは本質的に異なる、二つの民主主義が共存できるはずがないと。
崩壊発生因子は、ギリシャ危機に代表される南欧対北欧、移民問題が大きい西欧対東欧、域内リーダーである英・独・仏のこじれた三角関係、新左翼・新右翼の台頭(いずれも反統合)、ロシアとの関係(例えば、ロシア金融に過度に依存したキプロス)、各国独自の通商政策(中でもドイツの中国接近)などがあり、いずれも一国のリーダーでは解決できず、EU大統領や欧州議会の非力もあって、具体的な対応・改善策が図れる目途は立っていない。加えて、著者は「欧州の歴史は、戦争と通貨統合の失敗の繰り返しだった」とし、ユーロの将来に疑問を投げかけている。
この本を読んで“城壁”がいたるところでほころび始めていることは分かったが、我が国の巨額の財政赤字、高齢少子化、安全保障問題などを見るとき、欲望民主主義にどっぷり浸かっている“日本崩壊”がむしろ現実味を帯びて迫ってきた。

4)ヒラノ教授の論文必勝法
出版社から贈られてきたこの本のタイトルを見たとき先ず浮かんだのはロングベストセラー、木下是雄(元学習院大学学長)の「理科系の作文技術」である。発刊直後に購入、一時は座右の書であった。学術論文を書くことはほとんどなかったが技術レポートをまとめるときにはよく利用したものである。息子が大学に入った時彼に贈ったので今は手元にない。同じような本を“ヒラノ教授”が今頃何故?これが率直な印象であった。
しかし、書き出しでいきなり「理科系の作文技術」が取り上げられ、これがいかに名著であるかを手短に説明した後、「これに付け加えるべき作文技術のノウハウは何もない」としながら、出版社の要望に応え“他人の書かない本、書けない本を書く”と決意を表明する。「ウオッ!それでは何を?」となる。
目指すは作文ハウツーものではなく、滞米研究者時代洗礼を受けた Publish or Perish(論文を書かざる者は退出せよ)”文化に応えられる研究論文を、研究者として一定の評価を得られる出版物に掲載されことを教授する内容である。それもB級から国際A級の研究者の仲間入りを目論む、野心的な研究者が読者対象である。ちなみにA級の上には、ノーベル賞級のAAA、それに次ぐAA級があり、A級でも100以上の論文が国際的な学術ジャーナル(当然英文)に採択され、他の研究者にかなりの数が引用される、そのようなレベルである。となると一般の読者には意味のない本のように受け取られるかもしれないが、そこは“ヒラノ教授”である。
研究業績はどのように測定されるか、分野ごとに異なるカルチャーにどう対応するか、研究アイディアはどの段階でどのように公開するか(アイディア盗用を防ぐ)、どのようなジャーナルを狙うか、論文審査レフリーとの戦い方、AA級研究者の研究スタイルから如何に学ぶか、研究費や公表のための資金確保、執筆時間の捻出、共同研究者(主に大学院生)との関係などなど、論文にまつわる研究者の世界を観客席から試合を見るような楽しさで読める工夫も確りされている。
なお著者は150編の論文を退職(70歳)までに投稿・掲載されている正真正銘の国際A級学者である。
従来の“ヒラノ教授”シリーズは人を中心とした、小説調のセミフィクションであったが、今回は完全なノンフィクション・ガイドブックであるところが大きな違い。理工系の研究活動に関心のある人にお勧めしたい。

5)歴史という武器
著者は現代日本を代表する歴史学者(東大名誉教授;中東・イスラム専門)、総理(小泉、安倍一次)の私的諮問機関から政府の各種審議会(文科、外務、経産)まで幅広く活躍している人。その歴史家の視点と政治に近い活動域から書いた社会・政治時評がこの本の内容である。
かなり長いまえがき(32頁)と総括としてのあとがき(13頁)はこの単行本発刊に際して書かれたものと推察されるが、本文の大半(47話中44話)は200812月から201211月までの間新聞雑誌に掲載された時評から成る。つまり丁度民主党政権下の時期に重なるわけで、稚拙な政府運営が際立った特異な期間だけに、著者の危機感(特に安全保障と財政からくる国の将来)、主張がひしひしと伝わるものばかりである。そしてその批判はそれを誕生させた国民にも向けられる。私もそのポピュリズムに乗った一人だけに、反省させられることが多々あった。
47編の話題は、大きく第1章“競争、嫉妬、憎しみの宰相論(国内政局編)”、第2章“グローバル権謀術数の裏を読む(国際情勢編)、第3章“動乱と戦争から叡智を学ぶ(熾烈な歴史編)”の三つに括られ、それぞれの話題に、日本史、西洋史、イスラム(ペルシャ、トルコなど)史、中国史を援用しながら話題の核心を明らかにし、“今後”を示唆する。まさに歴史家の役割である。
例えば、民主党政権誕生直後に書かれた(2009914日;産経新聞)“日本の「せんたく」をする前に”では、新政権の外交・安保政策に懸念を示し、幕末の志士坂本龍馬が姉に宛てた手紙「政治懸案を解決するすべをもたない幕府の腐敗官僚を相手に戦い、彼らを一掃して日本をもう一度、汚れを洗ってきれいにしたい(著者現代訳)」を、鳩山代表や岡田幹事長は「我が意を得たり」と思うかもしれないが、党員やこれを支持した国民も、性急な変革を求めず、むしろ党内の澱やよどみを“せんたく”する勇気が先ず求められると警告している。普天間移設問題で米国にルーピーと揶揄された鳩山、尖閣や原発でバタバタした菅を見るとき、これはなかなか鋭い指摘だったと、その慧眼に感心させられた。
ただ、この種の本(以前に発表された時評を後日まとめて出版)は、対象になるテーマが過去のものだけに「今読んでどうなるのか?」というもどかしさがどうしても残る(歴史家としては意義があるし、歴史から学ぶことは確かにあるのだが・・・)。

6)駅名で読む江戸・東京
“刑法”同様“駅”に惹かれて買ってしまった。しかし内容は“刑法”以上に“鉄道”から距離があった。著者の前著に「地名で読む江戸・東京」(未読)と言うのがあるようだが、その続編として書かれたものである。現在の東京の地名がどこからきているか、どんな変遷をたどったか、そんな内容を郷土史資料に基づいて一駅数ページで解説したものである。
取り上げられた駅の数は47。これを山手線、都心部、東郊、西郊、多摩の5地区に分けて章立てしている。地名そのものの起源、名物・名所・著名人、その土地に関わる歴史や出来事、鉄道との関わりなどを取り上げているのだが、極めてローカルな郷土史が中心で、その土地に特別な縁がないとほとんど興味が持てない。
“縁がある”と言う点で一寸おもしろかったのは<池上>。ここには妹(故人)の嫁ぎ先がありしばしば本門寺を訪れる機会があった。池上線も当初は本門寺詣での人を蒲田から運ぶことが目的で敷設されたのだが、それ以前(明治末期)、日蓮の命日(忌日)1010日から13日まで“お会式”と呼ばれる中世からの儀式のための参詣行列が現在京浜急行の青物横丁辺りまで続くほどの賑わいだったと紹介されている。参詣路が限られていた時代だったのだろうか、信じられないような長蛇である(約8㎞)。しかしこの項では本門寺の話ばかりで<池上>の地名由来は一言もない。
また、江戸・東京と銘打つわりにかつてはほとんど原野だった西郊(武蔵野台地)や多摩地区の割合が多い(21)。駅の選択基準が全く分からないが、どうも著者が東京学芸大学(小金井)の教官だからではないだろうか?
2003年初版で既に5刷に達しているからそこそこ売れているのだろうが、人に勧めるような本ではない。

<今年の3点>
1229日(日)の朝刊には各紙とも書評委員による“今年の3点(冊)が恒例によって紹介されていた。<今月の本棚>では今までこのようなことを行ってきていないが、今年からそれに倣ってみたい。新聞の書評委員はある程度専門担当ジャンルがあるが<今月の本棚>は私一人で担当するため偏りがあることはお許しいただきたい。また、<今月の本棚>の場合厳密には書評とは言い難く“読後感と私との関わり”を書いているので、その点でも異なることをお断りしておく。まあお遊びとしてご覧いただければと思う。
本年は全部で59冊(64巻)の書籍を<今月の本棚>に掲載した。このうちフィクション(セミフィクションを含む)は10冊(13巻)で圧倒的にノンフィクションが多い。また英書5冊を含んでおり、これらはすべてノンフィクションである。
以下の3点の紹介は順位を表すものでは全くない。

    クリフトン3代記(第1部 時のみぞ知る、第2部 死もまた我等なり);ジェフリー・アーチャー;フィクション(本棚-58、-63
本書は英国では既に第3部まで刊行されているが、本邦ではまだ第2部までなので完結していない。しかしながら第一次世界大戦終結時から始まる英国階級社会を舞台とする一人の少年を巡る波乱万丈の物語は各部で一区切りつくのでそれで評価した。久しぶりに本格的なフィクションの面白さにとりつかれたからだ。

    世界の技術を支配するベル研究所の興亡;ジョン・ガートナー;ノンフィクション(本棚-61
ノーベル賞受賞者を多数輩出し、通信とコンピュータの世界に絶大な影響力を及ぼした研究所の歩みを有名研究者(シャノン、ショックレーなど)や優れた研究マネージャーを中心に紹介する。
プログラム内蔵型コンピュータの発明者のフォン・ノイマンを主役として描かれたプリンストン大学高等研究所(アインシュタインやオッペンハイマーも所属)を扱った“チューリングの大聖堂”とどちらを選ぶか迷ったが、読み易さの点で
こちらを採った。

    ビッグ・データの正体;ビクター・マイヤー・ショーンベルガー、ケネス・クキエ;ノンフィクション(本棚-62
グーグルを筆頭に膨大なデータを収集し、そこから知を生み出す“ビッグ・データ”の現在の利用状況から今後の社会へ与える影響までを論ずる、“ビッグ・データ”の優れた入門書。

次点 In Command of HistoryDavid Reynolds;ノンフィクション(本棚-54
あの(ノーベル文学賞受賞の)“第2次世界大戦回顧録”をチャーチルが如何に書き、如何に真実と違いがあるか(作為的か)を彼の置かれたその時々の立場や心境を、資料や聞き取りを基に調査分析した研究書。日本語訳があればトップ入選していたであろう(翻訳の質にも依るが)。
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