2015年5月3日日曜日

決断科学ノート;情報サービス会社(SPIN)経営(第Ⅱ部)-23


41989年経営トピックス-6;海外調査関連
中小の情報サービス企業(東燃関係を除けは主にソフト開発)として生き残り成長していくためには、大手と対抗できる分野で互角以上に戦える戦場を持たなければならない。我々が目指したのは化学プロセス工業、会社設立の動機となったIBMのプラント運転制御システムACSは親会社ExxonIBMの共同開発ソフトだったから、石油精製。石油化学マーケットでは先手を取ることが出来きた。ただこのソフトはIBM汎用機をプラットフォームとするのもので、少種大量連続生産の石油関連産業では抜きんでた力があるものの、同じ化学でも多種少量バッチ(間欠)生産には向いていなかった。ここで事業展開をするには、もっと多様なハード、ソフトの品揃えが要る。ハードはミニコン、ワークステーション、PC。ソフトは、プラント運転制御ばかりでなく、生産管理、プラント保全、品質管理などが必須だ。いずれも東燃グループに手作りのシステムはあったが、汎用性は無かった。
当時の日本の製造業は世界のトップクラスにあると思われていたが、それは主として機械や電機・電子工業に代表される組立加工産業で、鉄鋼・セメントなど一部を除けばプロセス産業では欧米が先行しており、早期に品揃えをするには彼らの製品を導入することが早道と考えた。その第一弾が前年提携したChesapeake Decision Sciences社(CDS)の生産管理システムMIMIである。前年の独占販売権をうけて、この年出光石油化学を始めいくつかの石油・石油化学会社から引き合いを受け、CDS創設者のTom Bakerも来日し、そのマーケティング・販売活動に力を入れ始める。
一方で化学プロセスに絞った業種から面白い仕事を受注する。三菱油化(現三菱化学)の子会社三菱油化BCL(現LSIメディエンス)という化学分析(特に血液分析に強く、ドーピング検査の我が国先駆者)システムである。これもIBM汎用機をプラットフォームとする手作りなのだが、品質管理に近い性格のもので展開力がありそうに感じた。
このような環境を踏まえ、5月の連休IBMからフィラデルフィアにおけるACSセミナーでのプレゼンテーションを乞われたこともあり、技術システム部の課長で滞米経験も長いYNGK)さんと一緒に米国のプロセス関連ソフト会社の訪問調査を(部分的には手分けした)行った。
シリコンバレーでは鉄鋼生産管理ソフト(Qronos社)、ボストンでは半導体生産管理(Promis社)、NYロングアイランドではBCLに似た血液分析ソフト(Axiom社)などである。結論から言えばいずれもIBMの機械の上で動く面白いソフトなのだが、ミニコン(オフコン;AS400)をプラットフォームにするものでそのまま当社が扱えるものではなかった。また彼らから積極的に日本マーケットに売り込む意欲を感じなかった。ただAxiom社で聞かされた話は意外なものであった。専ら犯罪捜査関連にこのシステムが威力を発揮しているとのことであった。「なるほど。それも一種の化学プロセスだ」
この時の調査の印象は、「アメリカには広義の化学プロセスに使えるいろいろなソフトが特徴のある会社から発売されている。継続的なウォッチングが欠かせない」「化学プロセスをもっと広い範囲でとらえてみよう」と言うことだった。このことはやがて我が国初のパイプライン・モニタリング・システムやリアルタイム・プラント・モニタリングシステムPIなどのビジネスにつながっていく。


(次回;1989年経営トピックス;1989年総括)

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