2015年8月23日日曜日

魅惑のスペイン-11


7.セビーリャ
丁寧に歴史を追うなら十分一日の見所はあると思われるコルドバだが、ランチが終わると1時には西南西140kmに在るセビーリャに向けて出発だ。外は真夏の陽気だが、幸いバス内はクーラーが効いて涼しい。周囲の景色は午前同様アメリカ西部に似た、乾いて荒れた土地が続く。昼の酒と見飽きた風景に皆うつらうつらの状態。添乗員も説明を中止して、単調で静かなドライブが続く。1時間も過ぎたころ道の脇に大きな牛の形をした看板が現れる。宣伝文句はなく、色も黒一色、それが一つではなくポツ・ポツと出現するのだ。どうやらここらは牛の放牧地で、ドライバーへの警告らしい。地形を見ると今までよりは平坦で広々している。道も若干混みあってくる。やがてバスはICを降りてセビーリャの町中に向けてヤシの並木道を進んで行く。ランドマークの一つ黄金の塔の近くの駐車スペースに停車、到着時刻は2時半だった。これから市中観光、先ず運転手がバイトで商う冷たいミネラルウォータを購入。一本1ユーロはリーズナブルな値段だ。
セビーリャは、日本ではセビリヤ、セビージャなどいろいろな表現がある。これは最後の3文字-llaが本来日本語の発音にし難いことから来ている。我が国で最も知られているのはロッシーニの「セビリヤの理髪師」のセビリヤだがどうもこれが現地語とは最も遠いらしいので以下セビーリャでいくことにする。大都会(アンダルシア州の州都、人口70万人はスペイン第4位;マドリッド、バルセロナ、バレンシアに次ぐ)で古都(フェニキア、カルタゴ、ローマ、イスラム、カソリックと長い歴史が刻まれている)。スペインを代表する闘牛やフラメンコもここが本場だ。コルドバを流れていたガダルキビール川は少し先で大西洋に注ぐので、ここまで大型船が遡上し港町として栄えてきた場所でもある(一時は新大陸への独占港であり、それだけ富の蓄積があった)。文化的にも先の「理髪師」ばかりでなくモーツアルト「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ(ドン・ファン)」、ビゼー「カルメン」などの舞台になる背景を持つ(カルメンが働いていたタバコ工場のモデルもある)。
本来なら数日滞在して、市中観光ばかりでなく、各種エンターテイメントを楽しみ、近隣のカディス、ジブラルタル、へレス(シェリー酒発祥の地)などへ足を延ばすべき場所に違いないが、今回は3時間程度の駆け足で限られた観光スポットを観て廻る。ここのガイドはスペイン人の中年女性、本来は英語が専門なので添乗員のSSKさんが通訳を務める。
バスが着いたのは“黄金の塔”。これは川を行き来する船の検問・防塞建造物、かつては(13世紀建設)川向うにも同じ塔が在ってその間に鎖を張って不審船を見張った所である。“黄金”はその外壁に貼られた金色のタイルからきている(同じような仕掛けはイスタンブールのボスポラス海峡にも在った)。
次はここから徒歩で10分程度、本日のメインエベント、大聖堂見学。前を洒落たスタイルの市電が走る。その道端で幾組もの観光グループがガイドの説明に耳を傾けている。
ここはカソリックの大聖堂としてはバチカンのサン・ピエトロ寺院に次ぐ大きさ、ヨーロッパの教会としてはこの間にロンドンのセントポール寺院(英国国教)が入るだけである。つまり規模を誇る所なのだが、歴史もユニークだ。本来ここにはイスラム教の大モスクが在って、これを壊して15世紀初頭から16世紀にかけて建設され、その際一部にイスラムの施設(鐘楼)やプロット(中庭;キリスト教の教会にはまず中庭はない)が残っているのである。

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(次回;セビーリャ;つづく)

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