2015年9月9日水曜日

魅惑のスペイン-15


9.スペイン新幹線AVE2
駅舎も、車両も線路もこの新幹線のために作られたことを考えれば、セビーリャ駅は、到着駅のマドリッド・アトーチャ駅が東京駅同様在来線と混用されていたので、我が国初の東海道新幹線と対比すれば新大阪駅といったところか。しかし、あらゆる面で両者には大きな差異がある。先ず、車両の編成だが、先方は先頭車と最後尾車のみが動力車で、その間に挿まれた客車は無動力、日本のような動力分散(電車)形式ではないのだ。次いで車両と運行システムである。車両はフランス製(ライセンス生産もあるようだが)、信号システムはドイツ方式である。つまり自国開発のものでないことである。とは言っても運行管理技術は確りモノにしており、出発も到着も定刻表通りだった。
1045分セビーリャ駅を出発したAVE2101号は20分もするとオリーブ畑が広がる、低い切通が多い丘陵地帯を快適に飛ばしていく。最高速度は300kmhとなっているが概ね250kmh。白壁の集落が時々現れては消えていく。40分程度走ると次の停車駅コルドバに到着、ここは在来線と混用(とは言ってもホームは専用)、新幹線用保線基地などもある。あとはマドリッドまでノンストップだ。この辺りも新大阪を発って、名古屋に停車した後東京まで止まらなかった、初期の“ひかり”と同じような運行方式だ。コルドバを出ると車窓の景観が少し変わってくる、土地の高低差が険しくなりトンネルを何度かくぐり抜けるようになる。樹木もオリーブオンリーから背の高い針葉樹に変わっている。
目を車内に転じてみる。内装は全体として淡いグレーと木目調、座席のやや濃いグレーとの調和は落ち着きがあっていい。天井から何台かTVが下りてきて映画を上映する。音は先ほど配られたイヤフォーンで聞く。チョッと変わっているのは非常脱出用のハンマーが前後室内ドアーの付近に置かれていることだ。高架がほとんどないのでこれでいいのだろうか(線路に沿うフェンスも低い)。
車内販売がやってくるが、飲み物中心。試しにコーヒーを求めたが何とネスカフェのインスタント、それでも2€とられた。
再び外を見ると山岳地帯を抜けてまた平原に戻るが、今度はオリーブ畑ではなく牛の放牧場、時々小集落、工場、大規模な太陽光発電などが現れては消えていく。感心するのは駅周辺や工場を除けば全く広告がないことである。これは高速道路でも同じ。日本を含むアジア人とは異なる美的センスがうかがえる。日本の新幹線沿線広告は何とかならないものだろうか。まあ、延々と町や家屋が続く東海道新幹線とは土地利用形態も大違いではあるが。
13時過ぎ初めて大きな道路との立体交差が現れる。少しずつ高層建築が増えてくると、もうマドリッド市内。1310分、定刻通りアトーチャ駅に到着した。
ここでハプニング。我々の乗った車両は10号車、最後尾である。頭端式のホームを先頭車まで歩き、その一部を利用した荷物室でスーツケースを受け取らなければならない。しかし、それらしき作業をする人は全く居らず、先頭車両に乗っていた運転手も既に下りてしまっている。添乗員のSSKさんが駅員に問い合わせるのだがさっぱりらちが明かない。このままだと回送列車として車庫に入ってしまう!マドリッドのガイド(日本人女性)がやってきて携帯電話でどこかに連絡。5分位(到着からは10分以上)すると担当者が息せき切ってやって来た。事情を聴けば、この荷物の処理は駅員ではなく観光会社の受け持ち、前に到着した団体の荷物が多く、その扱いに予想以上に時間を食ってしまったとのこと。素早く車内清掃し折り返す我が国新幹線では考えられない悠長さであった(この速さと要領のよさは世界的に“知る人ぞ知る”賞賛のまと;ユーチューブで流されている)。

蛇足:ここの新幹線は右側通行(日本と反対)だった。フランス新幹線は左側通行だった。フランスの新幹線は在来線にも乗り入れているから在来線も左だろう。イタリアの新幹線・在来線も左側通行だったように記憶している。ただし、フランスやイタリアの地下鉄は右側通行だった。英国はどちら(在来線・地下鉄)も左側通行だった。英仏間はトンネルでつながっている。両方とも左なら問題ない。今やフランスとの間で国際列車(在来線タルゴ)を走らせているスペイン、左右問題はどう解決しているのだろう?

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(次回;マドリッド)


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