2016年11月6日日曜日

決断科学ノート;情報サービス会社(SPIN)経営(第3部;社長としての9年)-4


3Ross社とルネサンス-2
無名のERPPROMIXROSS社を知ったのは、199310月、KBEさんと言うこの方面を調査していた当社社員からである。彼が帝国ホテルで開かれたていた米商務省主催のトレードショウに参加してこれを見つけ「来日している代表者とコンタクトする連絡先も聞いてきました。一度会いませんか」とショウの報告がてら問うてきた。翌日夕刻宿泊先の東京ヒルトンで、KBEさんを含めディナーを一緒しながら話し合うことにした。JSWと言う私よりはかなり若い国際ビジネス担当の副社長。初めての来日で、日本の情報サービスビジネスにほとんど通じておらず、具体的なビジネスプランは全くなかった。従ってこちらの総代理店提案は予期せぬことだったようで、「帰国してから返事をする」と言うことでその場は終わった。私もまだ社長内示を受ける遥か前だったから、それで異存なかった。
我々が先ず手掛けたのは、この会社と製品を調べることである。分かってきたことは既にNASDAQに上場している会社であること、PROMIXは英国の会社が開発した経理を中心としたシステムをROSS社が買い取り、これが発展してERPとしての体裁を整えてきたこと、顧客にプロセス関連企業は多いが、石油・化学などの大企業よりは食品・薬品・化粧品などの中堅企業が主体であること、知名度の高い顧客もあるが、全社展開ではなく導入事業所が限られていること、現在のCEOはジョージア工科を出た後長くIBMSEを務めてきたが本製品の開発には関わっていないこと、経営パフォーマンス(特に営業利益)があまり高くないこと、などである。それまでに提携してきたCDS社(生産管理パッケージ;MIMI)やOSI社(リアルタイム・プラントモニタリングパッケージ;PI)のような、創業者がパッケージ開発の中心に居る、小さいながらも大手プロセス工業を主要顧客とする会社とはいささか性格が異なる点が気になるところであった。ただ、日本の大手プロセス関連企業は、ERPなら先ずSAPと言うスタンスであり、それを当社が元請けとして担ぐ可能性は極めて低いことから、中小・中堅狙いのPROMIXは、今までSPINが必ずしも得意ではない、ニッチマーケットに受けるような気もした。
1994年社長になるとこの提携話を具体的に進めるフェーズに入る。ROSS社の総代理店契約条件は5年間にわたってパッケージ購入を段階的に増やすことを求めるもの(売れても売れなくても、毎年事前にその金額を支払う)。その額はほとんど年間利益に等しく、そのままOK出来るものではなかった。固定仕入れ金額の低減と契約の中途見直し可を条件に一歩前に進むことにし、一方で常務のMYIさんを頭に数人のスタッフで米国におけるROSS社の信用調査(主に財務体質)に赴いてもらった。調査結果は財務体質が特に優れてはいないものの、一応経営状態は健全で、何かあった場合のパッケージ販売・利用権も留保されることが分かった。
これらの条件と調査結果を踏まえて、総代理店契約の可否について役員・部長で何度か経営会議を持った。若干の減額があったとはいえ5年間にわたって課せられたパッケージ購入代金は当に社運を賭す額である。比較的緩い制約(ノルマ)の下で着実に実績を上げてきたMIMIPIのビジネスとは明らかに違う。経営会議は何度も紛糾した。既にパッケージビジネスが順調に進んでいる技術系は反対、手作り受託開発から一歩脱却し、新たな情報サービス提供を実現したい事務系が賛成。利益率では技術系、売り上げ規模では事務系、それぞれの立場から自説の正統性を主張する。私自身悩みに悩んだが、「新しいビジネスに挑戦してみよう!」との気持ちが勝り提携に断を下した。
ROSSPROMIXReissuanceiReissuanceと改名) についてはこれからも何度か取り上げることになるが、いくつも行った“社長としての決断”の中でも12に位置づけられる出来事であった。


(次回;SBC社のこと)

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