2017年9月5日火曜日

決断科学ノート;情報サービス会社(SPIN)経営(第3部;社長としての9年)-28


13.海外提携会社動向-3
英国の石油コンサルタントKBC社については本篇―8ですでに触れた。KBCはエクソンヨーロッパ技術センターの3人の元技術者の頭文字、皆化学プロセスエンジニア。コンピュータを扱うシステムズエンジニアとは職種が違い、石油精製プロセスの設計や改善を主たるサービスとする、技術コンサルタントである。KBCはプロセス工業向けソフトウェアパッケージを扱うCDS社やOSI社と異なるのでSPINとの関わりは、シグマファイン(ΣFine)と名付けられた、化学工業向け物質収支や熱収支の調和を数理的に処理するパッケージの付加価値販売に限られていた。化学プロセスは相の変化(気体⇔液体⇔固体)を伴うために、原料と製品総量のバランスが正確に一致しない。これを計測器の精度に合わせてつじつまの合う数値に補正するのが、Σファインの機能である。KBCにとってみれば、自社の仕事(生データによるプロセス解析)を進める上で必要な道具を外販している形である。従って、経営的にはそれほど重要ではなく、人員も少ない。当然海外まで販売するための営業マンを手広く展開することは考えられない。そんなことで、SPINが国内総代理店になったわけである。
SPINにとってKBCは海外石油精製工場に関する情報収集に役立つことがメリットだったし、KBCにとっては国内の石油会社へのアプローチとして利用価値があった。お互いΣファイン以外のところにむしろ相互に利用価値を認めていたのが実態である。実際、東燃がPIPProfit Improvement Program)と称するKBCの石油精製プロセス診断・改善サービスに取り組む手助けをしたり、太陽石油への本プログラム売り込みのために、元東燃の役員で太陽石油の会長になっていたKNIさんを引き合わせるなど、昔のExxonの仲間として、ビジネスを超えた良い関係を維持していた。そして、それらがきっかけとなり、やがてKBCJapanが設立される。日本代表になったのはモービル石油(日本)の元技術担当常務でそののち極東石油副社長を務めたKWKさんが就任。これも旧知で、関係強化に役立った。この間Σファインは東レで採用され、さらにいくつかの製油所にも導入され、OSIのリアルタイムプラント運転データ収集システム、PI(パイ)で集めた生データを調和させ、全社のERP(統合経営情報)システムにつながる道が見え始めてきた。
そんな矢先、OSI社社長のPatから「KBCがΣファインを売りに出している。買おうと思うがどうか?」とのメールが私のところに入ってきた。無論「プラントと経営をつなぐ有効なツールだから是非買うべきだ」と答えた。譲渡交渉はスムーズに進み、ヒュートンに在ったΣファインの開発センターはOSIの下に入り、OSIにとっては石油の首都に進出する機会にもなった。
身軽になったKBCは折からの原油価格の上昇や新興国(特に、インド、中国)の石油製品需要増を受けて事業は躍進、ついにロンドン株式市場の新興企業部門(NASDAQに相当)で上場を果たす。ΣファインがOSIに移った段階で、会社としての関係は切れ、KWKさんやBCとの関係はその後も続いたが、私がSPINを去る2003年より前に、いすれも第一線を去っていった(社長だったCPeter Closeはその後も長くシニアコンサルタントとして同社に残っていた)。
横河電機はプロセス向けソフトウェアを扱う会社には関心が高く、一時はこの世界のトップランナーであるAspenTechとも業務提携していたが、SPIN買収後はそれ以前からSPINが扱っていた生産管理パッケージMIMI以外の関係を断ちOSI社、Ross社とはSPIN通じて間接的に提携関係を持続した。しかし、KBC社とはSPIN買収以前から関心が無く、この会社に興味を持つ人は皆無だった。2003SPINを去り、本社海外営業事業部の顧問に就任してから、私は「ソリューションビジネスに本気で取り組むなら、石油精製に関してはKBCと何らかの関係を構築すべき」と機会あるごとに、関連事業部門や経営者に薦めてきたが、2007年退職するまでそれが叶うことはなかった。去って9年、20162月日経の新聞記事で驚かされる。「横河電機、KBCを傘下に」と報じていたのだ。かつての同僚で海外企業との提携を熱心に論じ合い、今はヒューストンに居るKBYさんから直ぐにメールが入った。少しは在籍時代のことが役に立ったのだろうか?今はその成功を願うばかりである。


(次回; 海外提携会社動向;つづく)

0 件のコメント: