2008年7月26日土曜日

滞英記-2

2007年5月27日
(写真はダブルクリックすると拡大します)
 5月21日(月)ホテルからアパートに移りました。場所はランカスター市の東(やや北寄り)端(ポストコード;LA1の東境界)です。大学はLA1の南東境界にあるので一旦市内へ出てそこからバスで大学に行きます。
<新しい住まい>
 私のアパートはいわば新開発地で、リビングがある東側は高い白樺の並木の先に緑の牧地が広がっています。3階建ての2階ですがこの白樺で残念ながら緑野一望とはいきません。
 こんな場所なのでバスもメインが走っておらず近隣住宅地内を循環する小型バスで市内へ出ます。ただこのバスは1時間に一本で時間もあまりあてになりません(5時が最終で、日曜日は無し)。街へ出るときは下りになるので歩いています(25分位)。帰りは辛抱強くバスセンターで待って帰りますが、時々循環方向が逆しか来ないことがあり遠回りして帰らざるを得ないこともあります(その場合料金が違う!;近い方は80ペニー(約200円)、遠い方は1ポンド10ペニー;山手線も回り方で本当は料金が違うんですかね?)。このバスの主な乗客は住宅地に住むお爺さんお婆さんたちで、歩くのがやっとという人も居ます(因みに年寄りはタダのようです)。そして住宅地内では自宅近くで乗り降り可能になっています。


                  部屋からの眺め
ウィリアムズパークから湖水地帯を望む

私はこの住宅地を出て、メイン道路に面したウィリアムズパークと言う、ランカスター市内からさらに湾を隔てて湖水地帯の山々(と言っても低い丘ですが)を望む(東端にあり西側が一望できる)小高い丘にある公園前で降り、そこから5分位歩きます。バス停からはやや下りで、東側に広がる牧野(なだらかに東へ高くなっていく)を眺めながら帰ります。このところ当地は天候がよく、遅い午後帰ると西にある太陽がこの野原を鮮やかな緑に染め上げます。
<電話加入>
 今週もっとも手がかかったのは電話加入(電話機、回線はあるが番号をもらう)です。不動産屋からブリティッシュテレコム(BT)へのアクセス方法(自宅から150へ電話するだけで良い)を試みたが、返ってくる返事は「あなたのおかけになった番号は見つかりません。もう一度ご確認の上おかけ直しください」と言う録音が繰り返されるだけ。翌日不動産屋に出向き確認したところ、「0800(フリー);800-150で繋がるからこれでやってみてください」。自宅で試したが結果は同じ。公衆電話から試すと初めに自動応答がありやっと人間と会話できるところまで辿り着くが、銀行口座や何やら問われて上手く話が繋がらない。やむなく翌日午前再び不動産屋に出向き、その場で試してもらうと何と繋がることは繋がるが「こちらは大変ビジーです。申し訳ありませんがしばらくお待ちください。出来るだけ早くいたしますから」と言うメッセージが繰り返されるだけ。さすがに手伝ってくれた若い女性も大変さが分かってくる。結局2時間近くたっても繋がらず、一旦あきらめ午後再訪することにする。3時過ぎに再度トライすると15分ぐらいでつながり不動産屋の助けを借りて何とか注文番号を取得するところまで行く。自宅に電話が無いので不動産屋を連絡窓口にしてもらい、48時間以内に番号を連絡するという返事をもらい帰宅(これが火曜日)。
 2日後、木曜日大学へ出かけた後不動産屋に寄るが答えは来ていないとの返事。翌午後再訪と言うことでこの日も実り無し。
 金曜日午後出かけるも状況変わらず。
 夕食を済ませふと思い立ち(ひょっとして回線は生きているが番号の連絡が無いだけではないか?)、電話をかけてみる。何とフリーダイアルがかかる(時間外であることのテープが回っている)。早速インターネットを繋いでみる。繋がった!予想通り回線は48時以内に活かしてくれたのだ。しかし自分の番号は依然としてわからない!
 土曜日(昨日)予定では番号確認に不動産屋に出かけることになっていたが、電話が通じているのでフリーでBTに繋ぎ(例によってビジーで大分待たされたが)注文番号を言い、番号を教えてくれるよう頼んだところ、住所・氏名など確認があったが不動産屋経由で手続きしたため直ぐに回答できないという。今のところこちらからの電話は通じる(インターネットも)ので当面困ることは無い。しかし、二人の友人と英国人の友人から電話をかけたいとのメールが入っている。何とかならないか?不動産屋を煩わせたくない(本来彼らの仕事でない)。
 来英する際携帯(ドコモ)を海外対応に更新しておいた。これはチョッと料金体系が複雑で英国内で使う場合、こちらがかける場合は滞在国内通話料、先方がかける場合は国際電話料金がかかる。そんな訳でこちらにきてから日本とのメール受送信にしか使わないできた。番号不明の固定電話から携帯にかければ着信記録が残るはずだ!この着信記録が私の電話番号だ!早速試してみた。分かった!今度は携帯から固定にかけてみた。チャンと固定に届いた!一件落着です(いまだにBTからは何も言ってきませんが)。
<ゼミが始まりました>
 24日(木)より研究ゼミ(と言っても当面僕の課題?に対応するためマンツーマン形式)。教授はマネジメントスクール所属、名前はMaurice Kirby(左写真)、64歳、家族は息子(独立)、娘(既婚)、夫人の4人家族。Maurice、Hiroと呼び合うことにしました。
既に来英前から何度か研究対象・計画に関してはメールでやり取りしているので、各種関連資料(と言ってもほとんど彼のペーパーですが)を2度目に会ったときに4種、今回2種くれこれを基にディスカッションしようと言うことになりました。内容は全て軍事ORの歴史(第一次大戦から冷戦まで)に関するもので当方の意向ともよく合っています(私の目的;「軍人(意思決定者)とOR組織間の相互理解環境改善」と言う視点ではやや“歴史”そのもの力点がある)。
 今回の資料は;1)第二次世界大戦における英空軍でのOR適用、2)冷戦下ワルシャワ軍対NATO軍の戦術核環境を第二世界大戦のドイツ軍西部戦線電撃戦で英仏・独双方に戦術核が存在した場合どのような戦術展開が在ったかを冷戦時の戦術策定に使われたORをベースに置き換えて検討する研究、です。いずれも私にとっては興味深いものですが、マネジメントスクールの教授としてどんな業績になるのか些か心配です。しかし、イギリス人(社会)の特質に、アマチュアリズム尊重や道楽(興味のあること;競走馬、猟犬、バラなどの品種改良?探検などその例)にのめり込む傾向があることは初期のOR適用展開の重要な因子と考える私にとって彼自身が私の研究対象になってきそうです。
 “毎週木曜昼食を挟んで2時半位まで”が私のための時間なので、研究室に11時過ぎ出向くと、「今日は2時半から学生の試験なので直ぐ飯にしよう」、とマネジメントスクールが経営者研修に使うホテル(最初に泊まったホテル)に行く(レストランではなく軽食も採れるバー)。「何か飲むか?」と問われたので、「じゃあコーヒーを」と言うと、「??私はビールにするよ?」、「??(エッ!)、それなら僕も!(喜んで)」。と言うわけで1パイントの黒ビール(ビターと言う;John Smith’s; Guinnessより軽い)で“ゼミ”が始まる。「学校で昼間からアルコールは許されるのかい?」、「アルコールの問題はイギリス社会で大きな問題になってきている。かつてパブは夜しか開かず終了時間も10時位だった。だから自分の学生時代はラストオーダーの時間が迫ると急いで強い酒を飲んだものだ。しかし今では昼日中から午前3時頃まで飲める。由々しき問題だ(が)」、「学内には数箇所パブがありそこでいつでもビールは飲めるんだよ」。
 この後は今回くれたペーパーを中心に真面目な話をする。
・著書完成までの苦労話(8年を要している)。          マネージメント・スクール
・類似著書について(主として私の方から)。
・(私の)国立公文書館保存資料へのアクセスの可能性;第二次世界大戦に関してはほとんどのコピーがMauriceの研究室にあるのでいつでも見せてくれるとのこと。
・“戦術核とOR”は7月プラハで開催の「欧州OR学会」で発表する。また、11月シアトル開催のアメリカOR学会にも参加する。
・今日の試験の課題となる、陸軍OR組織が1950年代に始めたウォーゲーム(兵棋演習)教科書(写し;多分マイクロフィル拡大コピー)の内容。
・ORの始祖とも言える、ブラケットのこと;戦後ノーベル物理学賞(宇宙線研究)をもらう(これは知っていた)。思想的には“極左”で50年代アメリカ入国を拒否された!英国の原爆開発に大反対。これもあって原子力開発・利用に関してあらゆる関連情報から遮断された。ウィルソン労働党政権で返り咲く、など。Blackettについては研究を進める上で最重要調査事項の一つなのでこれからが楽しみ。(この間彼は1パイントを飲み干したが全く顔に出なかった。私はこの後不動産屋に寄る予定があったので25%位で我慢した)
 さて、支払いの段になりました。ビール、サンドウィッチとコーヒー二人分で23ポンド。「割り勘にしよう」と言ったところ、「今回は私が払うから次回頼む」と言うので任せる。しばらくカウンターで何やらやっていたが、席に戻ってきて「クレジットカードがテクニカルプロブレムで上手く処理できない」と言う。再度カウンターでバーテンと話し合っていたが、戻ってきて「ダメだ!Hiro 済まないが半分負担してくれ」と言うのでチップも含めて25ポンドとし10ポンドを私が負担した。帰路マネジメントスクールの建物を通り抜けバス停のある方まで送ってくれるので、「大丈夫だ。バス停は分かっているから」と言ったら、「いや金が無くなってしまった。ATM(現金支払機;振込み機能は無い)で金を下ろさなきゃならないんだ」 つまり彼は25ポンド(約5000円)の現金を持ち合わせていなかったのだ!自動販売機は全く見かけないのに(唯一どこにもあるのは先払い制の駐車券を買う機械;ただしコインだけです)、街の至るところにATMがあり、いろんな人が並んで順番を待っています。彼らは現金が必要になると少しずつ下ろすのです。

 まだまだ、失敗やビックリを数々体験していますが追い追いご報告します。

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