2011年5月29日日曜日

決断科学ノート-76(大転換TCSプロジェクト-13;比較調査への取り組み-2)

 比較調査の対象はメーカーの提供する製品ばかりではない。プラント運転部門のメンバーがこの調査チームに加わったのは、その使い勝手や将来のプラント運転の在り方を探るためでもあった。本稿-4で紹介したような、計器パネルの無いコンソール(操作卓)中心の運転がエクソン・グループでも実現しつつあり、これへの関心が高まってきていた。
 秋口になると横河や山武から製作中の最新式オペレータ・コンソール見学(主としてDCSマンマシーン・インターフェース標準機能)の機会が、国内発注者の了解を得てもたらされるようになってくる。両社とも関東地区に在ったので、調査チームの見学会に合わせて、川崎工場から運転員を連れて参加することも出来た。そこにはハネウェルのダリモンティが’70年代前半に描いた将来像が実現していおり(TCS-4参照)、彼らから感嘆の声が発せられた。第一世代ではシステム関係者によって推進されたプラント運転・制御システムの導入も、数々の試練と経験(特に石油危機)を経て、運転部門を含めた工場全体の関心事になってきたことに世代の違いを感じると伴に喜びを禁じえなかった。
 正確な月を記憶していないが、晩秋運転部門の課長を含む調査チームの面々は、アフィリエートの最新システムが導入されている工場訪問調査に出発して行った。欧米の四、五ヶ所のリファイナリー、石油化学工場を訪れているが、目玉はエクソン化学USAのBOP(Baytown Olefin Project;ハネウェル)、それにTCCでも発表のあったアントワープ製油所(IBM)であった。
 BOPは当時エクソン・グループ最新鋭の工場で、技術文献や会議の交流を通じ、計器室内に八角形に配置されたコンソールで全プラントを運転する斬新な設計で知られていた。TCCの出張時見学を希望したが千客万来で断られたいきさつがあるのだが、今回の東燃の求めにはOKが出た。SPCはハネウェルの最新制御システムPMS(Plant Monitoring System)のExxon版PMX、DCSはTDC-2000で構成されていた。TDC-3000が完成すれば、DCSだけ違うだけでほぼこちらの望む次期システムが実現する。最も調査に力が注がれた訪問先である。
 一方のアントワープはインペリアル・オイル(カナダ資本とエクソンの合弁)ストラトコーナー製油所に次いでACSが導入された所で、これもACSとしては最新のもの、ストラトコーナーで洗い出された問題点がかなりつぶされていた。
 訪問調査は最新システムの工場ばかりではなく、既存のプロコン導入工場やEREも含まれており、それらの考え方も当然その後の比較検討・要求仕様に反映されることになる。その重要情報の一つは、この時点で、エクソンUSAがACSにより強い関心を示していることであった。TCCに参加し、そこでのボブ・ボルジャーのACSへの思い入れを知る私にとって「やはりそうか」との感を強くさせた。
 この海外調査団の結論は、ハネウェルのPMX+TDC-3000とACS+CENTUM最新モデルを東燃グループ次期システム候補として絞り、両社の良いとこ取りを狙おうと言うものであった。
(次回;比較調査-3;工場での準備)
注:略字(TCC、ERE、ECCS、SPC等)についてはシリーズで初回出るときに説明しています。

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