2013年7月14日日曜日

美濃・若狭・丹波グランド・ツアー1500km-16


13.虹岳島(こがしま)荘
ドライブ旅行で宿泊先を決める時の標準的な手順は、都市か観光地かで若干異なる。都市の場合はホテル(主にビジネス・ホテル;食事別)が対象となり、観光地では旅館が中心、いずれも情報収集はウェブ(インターネット)に依る。手順はこの連載の-3で記したので略すが、候補を数ヶ所に絞り込んで、さらに詳細チェックして(したつもりで)決定する。今回の虹岳島荘は“日本秘湯を守る会”メンバーであることが重要な決め手だった(口コミにやや気になる記事もあったが)。松之山(新潟)、湯の峯(和歌山)、乳頭(秋田)、龍神(和歌山)、白布(山形)などでこの会の旅館に泊まったが、温泉に関する限りどこも満足したからである(湯の質・量と浴場の鄙びた雰囲気)。
虹岳島は水月湖に飛び出した丸い小さな半島で、虹岳島荘はその先端にあり、道はここで終わる。茅葺き門を入ると直ぐ先に玄関が見えてくる。門と玄関の間は未舗装不整地で、山側にやや傾斜して67台のクルマが駐車できるスペースがある。クルマ止めも無いので、バックでの駐車は要注意だ。玄関からもんぺ(死語?足首部を縛る和装ズボン)を履いたおばさんが出てきて誘導してくれる。どうも女将さんらしい。
事前情報では近隣の古民家を移築改修したとあるが、玄関側から入ると、柱・梁・壁にはその趣があるものの、ロビーから左右に長い廊下が延びているので、とても民家とは思えない。部屋も確かに造作は民家風であるものの、普通の日本旅館とたいして変わらない。もっと違和感があるのは大きさである。こんな大きな民家が在る筈は無い。しかし、あとで湖水側から写した写真を見てこの疑問が解けた。何棟もの民家が横に並んでいるのである。おそらく解体・接続し大改築したのであろう。玄関・ロビー・食堂・客室(25室)は湖側の2階部分に、浴室・宴会場・遊戯施設などは1階に配置されているのだ。この特異な外形は泊り客には全く分からない。
自室での夕食は6時半に頼んだ。部屋の前には湖面が広がり、その先にはクルマとリフトで登った梅丈岳が見えるものの、夕闇が迫ってきている。景観を楽しむ時間帯ではない。昨晩は風呂が順番制だったが、ここは大浴場があるのでいつでも入れる。晩飯前にひと風呂浴びることにした。
風呂場は広さも充分、設備も整い、しかも湖が見渡せる。問題は湯であった。予約をした後で口コミをさらに調べている時、ここが温泉ではなく鉱泉でしかも水量が少ないため循環させていることを知った。一言で言えば唯の風呂である。誰も居ない大浴場で湯船に浸かっているのは快適ではあるが、“秘湯”に惹かれてここに決めたことが詐欺に遭ったような気分とない交ぜになり、今ひとつ楽しめなかった。
食事は湖水を見渡す広縁に設えられる。敦賀や小浜など比較的大きな都市に近いこともあるのだろう、やっと生ビールにありつける。料理は予想通り魚が中心。ただ特色のあるものはオコゼの唐揚げくらいで特に印象に残るものは無い。問題は配膳のタイミングである。幸い一気に並べられるわけではなく、前菜から生もの・焼き物等々順番に出てくるのだが、人手不足(調理・配膳)なのか間隔が長い。仲居さんがしきりに「すみません」を繰り返す。中には明らかに冷めて適温でないものもある。一人ひとりは誠実にやっているのはわかるが、それだけで不満足度を補えるものではない。翌朝の朝食は洋式の広い食堂だった。客が一ヶ所に集まっているので、給仕の効率もよく不満は無かった。夕食もこの方式のほうが良いような気がした。
チェックアウト前、部屋でぼんやり外を眺めていると、小さな遊覧船がやってきて、旅館の前でUターンしていく。「何故?」と思ったが、あとでこの旅館のユニークな造りにあることを知った。
(写真はクリックすると拡大します)


(次回:天橋立)

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