2008年8月8日金曜日

滞英記-3

Letter from Lancaster-3
2007年6月2日
<マンチェスター>
 話は少し遡りますが、初めての英国訪問で最初の宿泊地をマンチェスターに選んだのは以下のような経緯・背景からです。
 先ず、日本からどのようにランカスターへ行くか?空路ロンドンに到着、そこから鉄道でランカスターに向かう。近くに適当な空港の無いランカスターではこの案が一番常識的と考えました。しかし、滞英経験者のホームページなどをインターネットで見ると鉄道の信頼性が極めて低い。時間通り動かない。予定の路線を走らない。代行バス輸送が途中に入り英国人でも混乱している等々です。加えてロンドン市内を大きな荷物(半年分)を持って移動することの大変さ(ランカスター行きはユーストンと言う駅から出発する)。とても自信がありません。
 ランカスター滞在者(留学生としてランカスター大に居たことのある人達)のホームページや投稿記事を見ていると、買い物(特に食材)などでマンチェスターへ出ることが書いてあります。この情報を基にマンチェスターを少し調べると“英国最大のチャイナタウン”があるとの情報に接しました。これでかなりマンチェスターを中継地として選ぶ気持ちになってきました。ではマンチェスターへどう行くか?マンチェスターからランカスターへは?英国訪問経験者の多くがロンドンヒースロー空港のトラブル(スーツケースを壊され盗難にあう)を語ってくれ、マンチェスターへ行くならフランクフルトかアムステルダム経由の方がましと助言してくれました。しかし、この案はディスカウント航空券の点で不利なことが分かりました。ヒースローの危険は覚悟で、ブリティッシュエアウェイズ(BA)で出かけることに決めたのです。
 生活基盤が固まるまでしばらくレンタカーが必要と考えたのも、マンチェスターを基点にしようとした理由の大きな要素です。マンチェスターの地図(国内では入手出来なかった)をインターネットのグーグルマップで調べるとランカスターへ繋がるM6(高速道路6号線)へ比較的容易に出られそうです(実は地図との違いは、市街地の広がりが思っていたよりあったのと一方通行が多くM6へ出るのにチョッと迷いましたが)。
 ヒースローでの到着は予定通りでしたが、国内出発便は発着便の混雑で離陸が一時間以上遅れで、マンチェスター空港へは7時過ぎに到着しました。ヒースローに次ぐ国際空港と言われていますが国内便で入ったため、ターミナルも小規模ですし成田で積んだ荷物(ヒースローで触られた感じもしません)も全くチェックなし(通関のカウンターも無いし人も居ない。ただ税関の事務所があり申告物のある人は自己申告)まるで日本のローカル空港へ降り立った感じでした。
 マンチェスターは、一時はロンドンに次ぐ大都会(1930年代の70万人台が最高、現在は40万人強)でした。しかし、現在は製造業の衰退(英国全体に言える事ですが)で金融業が比較的活発なようですが、世界的に名を知られているのはサッカーチーム(ユナイテッド)位でしょうか?
 市の中心部は赤い石造りの中層ビルが多く、初めてイギリスを訪れた者にとっては充分“らしさ”を感じさせてくれます。私の泊まったホテルもこの造りで、これにロビーの広さと天井の高さ(そこにフロントが一人しか居ない!遅いチェックインなのでこのロビーにほとんど人が居ない)、さらに仄暗い照明が相俟って“らしさ”倍増でした。
 ホテルに落ち着いたらそれで終わりではありません。明日借りるレンタカー屋を特定し、ホテルまでの道を確認する必要があります。飛行機の遅れもありチェックインは午後8時頃でしたが緯度が高いので外はまだ明るさが残っています。フロントで確認するとレンタカー屋は徒歩で15分位とのことなので、早速薄暗い道をホテルでもらった地図を頼りに出かけ、簡単に見つけることが出来ました。ただ、一箇所工事中で一方通行のところがありこれを迂回する必要があることがやや気がかりな点です。
ホテルへの帰途中、件の赤い石造りの建物の一角に日本料理屋を見つけました。この日はほとんど飛行機に乗り詰めで、食事のサイクルが狂っているので食欲はありませんでしたが、駆け込み寺になりそうで何かホッとしました(と言ってもランカスターからは列車で1時間強あるのですが)。そして、その店の窓の一つに“Japanese Super Market”と書かれたネオンサイン見つけたので近くを巡ってみましたが結局見つけられませんでした。
 翌朝初めての英国式ブレックファースト(と言ってもビュッフェスタイルですが)を済ませ、もう一つの重要課題、これからの食材入手のためのチャイナタウン探訪をチェックアウト前に行うことにしました。これもホテルから2ブロックのところにあることが分かり、朝の通勤の慌しさが残る街を教えられたとおり出かけてみました。“英国最大のチャイナタウン” これから想像するのは、サンフランシスコやニューヨークのチャイナタウン、小規模でも横浜。しかし教えられた場所には石造りの中層ビルばかり。半順したところで少し狭い通りに入ると、見えました!あの赤い門が!マンチェスターのチャイナタウンは完全に英国式の区割り・建物の中に収まっているのです。外から見るだけでは“中華”の雰囲気はほとんど無いのです。しかも規模が極めて小さく横浜とは比すべくもありません。それでも一軒のスーパーに入ってみると中国食材を中心に東アジア(日本、韓国)の食材はほとんど揃っています。感激して日本米(10キロ)、キッコーマンと味噌を買ってしまいました。本来ならレンタカーを借りてから来るべきなのでしょうが、道に自信が無いし駐車のことも心配で、あとさき考えず買ってしまったのです。ホテルまでの道中が何と長かったことか!
 これらの買い物とスーツケースをベルキャプテンに託し、昨夜確認のレンタカー屋に出かけ新品同様のプジョー307(何と英国では珍しいオートマティック車)を借り受け、フロントでホテルまでの道を確認すると、昨夜気になった一方通行を避けるために予想もしない道を教えてくれ、これが一番簡単で確実だ!と言われ半信半疑でとにかく言われたルートをしばらく進みました。しかし、どうも左折が一本遅かったような気がして元に戻る道を探し始めるのですが一方通行が多く、やがて自分がどこに居るのか分からなくなって来ました。それでも何とか見かけた道に来たのですがことごとく右折禁止でどうしてもホテルに近づけません。やっと右折可の交差点へ来たのでホッとして右折したら直ぐに高速に入ってしました。専用道路なので簡単には降りられません。覚悟を決めてしばらく高速を走り、最初の出口で一般道に出てホテル方面と思しき道を進んでいると大きなランナバウト(ランナバウトについてはいずれお話しすることになると思いますが、ローターリー式交差点です。自動車の運転は左側通行、日本と同じですがこの交差点だけは日本には無いので、英国をドライブする際の注意事項としてよくドライブガイド書などで説明されているほどです)に来てしまいました。初めての体験です!しかし幸運にも、このランナバウトは昨日空港から乗ったタクシーで右折したものと瞬時に思い出し、その時ここの通行方法を注意深く観察していたので、インド人ドライバーの車線の取り方を真似で何とかホテル方面へ向かうことが出来ました。
 と言うような経緯で、マンチェスターに決めた狙いを予定通り実現し、やっと10キロの米とランカスターへの道をとることになりました。

<マンチェスター・2>
 5月18日(金)に新居借用契約が済んで直ぐレンタカーで例の米と荷物の一部をホテルから移動。部屋はフルファーニッシュとは言うものの消耗品はありません。しかし、食材以外はこの地のスーパーで揃います。問題は米・味噌・醤油以外の食材で、地元で用意できないものです。例えば麺や麺つゆ、非常時の即席麵、サラダも和風ドレッシングが欲しい等です。
 そんなこともあり、19日の土曜日鉄道でマンチェスターへ出かけることにしました(この鉄道利用もいろいろ初体験がありますが他日ご報告しましょう)。
 マンチェスターの中央駅とも言えるピカデリー駅は最初の滞在で大体の土地勘はついていました。駅からチャイナタウンがどの方向かが分かれば後は徒歩移動が可能です。それを確認して先ず出かけたのは前回滞在で目にした“Japanese Super Market”です。今度は昼間なのでその看板が出ている日本レストランの周りを裏まで回って調べてみましたが、やはりそれらしいものはありません。昼食にはやや時間がありレストランに客も居ないようです。しかし、一応オープンしているようなので中に入ると和服を着た東洋人の若い女性が出てきたので、「この辺にJapanese Super Marketがあるようですがどこですか?」と英語で聞いてみました。答えは英語で「こちらの地下がそれです」と案内してくれました。つまりレストランとスーパーが併設されているのです。
 地下へ降りると、有るわ!有るわ!一部キムチのような韓国食品も有るもの日本食材が何でも揃っています。客は私一人、無人だったスーパーに若い日本人の店員(関西出身の留学生)が出てきて対応してくれました。聞けば最近商品がまとめて入荷したとか。うれしくなってあれこれ(梅干や青紫蘇ドレッシング、本つゆなど)を買い求めました。精算をする時、「ここのレストランの料理はどんなものかな?」と聞くと、「昨日は僕が当番でしたが、今日は誰かな?」、「???」。アルバイト学生の作る和食とは一体どんなものか?些か心配でしたがここでランチにチャレンジしてみることにしました。
 メニューには一品料理もあるものの、昼食はセットメニューで構成されており、寿司ランチだけはわれわれが日本で目にするものと変わらないものの、あとは例えば<春巻き・味噌汁・鶏の唐揚げ・寿司・カツカレー・うどん・デザート(これで一人前!)>がセットと言うようなものばかり。確かに外国で日本レストランに入ると見かけたことのある組み合わせです。店員にそれぞれのボリュームを聞くとなんとかなりそうだし、日本食にしばらくありついていないこともあり、これとサッポロビールを注文しました。料理はいっぺんに出てくるのではなく、春巻きと味噌汁でスタートの洋食スタイルです。鶏の唐揚げはいかにも余分なので「テイクアウト(後で知りましたがここでは“Take away”と言う)にしてくれるか?」と問うと直ぐに適当な箱を用意してくれました(この晩はまだホテル泊まりでしたから、これとビール・クロワッサン・果物・紅茶で夕食に代えました;これもかなり変なメニューですね)。寿司も何とか合格。カツカレーとうどんも量が控えめで味もマアマアと言ったところ。
 帰り際に寿司を握っている(寿司だけは見えるところで握っている)黒Tシャツ・リーゼントの東洋人のところへ出かけると、「味はどうですか?」とかなり癖のある日本語で聞いてきました。話してみると日光・宇都宮方面のホテルや料理店で働いていた中国人でした。どうやらこのレストラン・スーパーとも経営者は中国人のようです(和服を着たウェートレスも中国人だった)。
この日は結局これだけでマンチェスター訪問を終え帰途に着きました。

<東方食品店>
 スーパーへ出かけると日本(あるいはこれに近い)の食材・調味料などがないかつい気になります。例えば、紅茶用の砂糖はあるが料理用が置いていません(何か黒砂糖のようなものはありますが)。また、米は結構有るものの例の細長い“外米(インディカ米)”ばかりです。ある時店員に聞いてみると、「それならバスセンター近くのChinese Super Marketに行ってみるといい」と言われました。しかし、なかなか見つからず道行く人に尋ねても誰も知らないと言います。しばらくその辺をうろつきまわっていると、有りました!<東方食品店>と漢字の看板を掲げた小さな店がタイ料理の店と併設されているのです。入ってみると店員の若い東洋系の女性が二人居るだけです。店を一巡すると中国・韓国・日本のものが量はそれほど多くないものの種類は結構あります。出前一丁(即席めん)、日本そば、豆腐、納豆、もちろんジャポニカ米も。この店へはその後時々出かけますが曜日・時間帯によっては若い東洋人(主として中国人)が大勢買い物をしています。聞くとほとんどランカスター大学の留学生で、彼らにとってもここは生命線のようです。 こんなわけで最低必要限のものは此処ランカスターでも確保できる見通しがつきました。
 正直、食の面では中国・中国人の存在に救われています。日本人はこんな田舎まで進出する必要もないし、また独立して商売をする商才もありません(“みやび”と言う日本レスランが在るには在るのですが、ほとんど客の出入りがなくあまりポピュラーとは感じません;入ろうという気分にならない)。街の中心部には大きな中華レストラン“Bamboo Garden(竹園と漢字表記もある)”がありここでビュッフェスタイルの食事も出来ます。初めてここで食事をし、精算をする時女将さんと思しき女性に話しかけられ滞在の意図を話したところ、達者な漢字で「活到老、学到老」と書いて、「貴方のような老い方は中国人の理想ですよ」と励ましてくれました。あとでこのことをMauriceに話したら、「彼女はここのマネジメントスクールの卒業生だよ」との返事が返ってきました。彼らの異国・異文化への浸透力を改めて認識させられました。

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